■数のフィボナッチ数分割(その11)

【2】スー・モース数列(1)

スー・モース(Thue-Morse)数列は,非周期的自己相似数列である.

[1]0,1,2,3,4,5,6,7,・・・を2進数表記すると,

  0,1,10,11,100,101,110,111,・・・  

[2]数字の総和を2で割った余りを計算すると

  0,1,1,0,1,0,0,1,・・・

これはスー・モース数列と呼ばれるもので,この数列に自己相似という性質がある.たとえば,この数列をひとつ置きに選んでも同じ数列が得られる.最初の2つの数字を選ぶ,次の2つの数字を捨てるという操作を繰り返しても同じ数列が得られる.すなわち,この数列は非周期的ではあるが,まったくランダムではなく,強固な短期的・長期的構造をもっていて,同じ数字が3つ以上続くことはない.

nを2進展開したとき,現れる1の個数が奇数の場合tn=1,現れる1の個数が偶数の場合tn=0と定める.たとえば,n=23では

  23=(10111)2→t23=0

 したがって,スー・モース数列{tn}は

  0,1,1,0,1,0,0,1,

  1,0,0,1,0,1,1,0,

  1,0,0,1,0,1,1,0,

  0,1,1,0,1,0,0,1,・・・

 ここには明確な回文構造が見られます.すなわち,先頭から2^n項があるとき,ビット単位に1と0を入れ替え,数列の後ろに連結します.すなわち, この数列に,部分列に各ビットの否定をとった部分列を付加すると

  0

  01

  0110

  01101001

のように再帰的に構成できる.

[3]各世代は前の世代にその補数を加えればよい.たとえば,0110の補数は1001であるから

0110+1001→01101001

[4]この数列を生成する別の方法もある.簡単な置換則

  0→01,1→10

をもとに非周期的で再帰的に計算可能な数列を生成してみる.0から始めると

  →01

  →0110

  →01101001

  →0110100110010110

  →01101001100101101001011001101001

このような置換則はフラクタル幾何学でしばしば用いられますから,ご存知の方も多いと思います.

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フラクタルが登場するまで,図形の次元は1か2か3に限られていた.ブロッコリーのフラクタル次元は約2.8,海岸線は1.28,人の肺は2.97であるという.

幾何学では分数次元を想像することも可能であるが,中でも有名なのは「コッホ雪片」である.コッホ雪片ではまず1辺の長さ1の正三角形を描く.それぞれの辺を3等分し,真ん中の部分を取り除く.そこに同じ長さの辺でできたV字型を置く.この操作を何回も繰り返すと,雪の結晶のような形になる.周長は1回の操作ごとに1/3ずつ増えるので,n回後の長さは(4/3)^n→∞である.また,無限に繰り返した結果できるフラクタル図形の面積は

  S=√3/4+√3/4・(1/3)^2・3+√3/4・(1/9)^2・3・4+√3/4・(1/27)^2・3・4・4+・・・=√3/4+√3/12/(1−4/9)=√3/4+3√3/20=2√3/5である.つまり,無限の周囲が有限の面積を囲んでいることになる.

フラクタル幾何学の父と呼ばれるマンデルブロは,星々がフラクタル的に凸凹に配列されている宇宙モデルを提唱した.もしそうならオルバースのパラドックスはビックバン理論なしでも解決できるからである.

 ユークリッド幾何学が宇宙の滑らかさを表しているのに対して,フラクタル幾何学は宇宙のデコボコをよく表しているといわれる所以である.

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