■包絡線(その6)

 三角形ABCの外接円上に点Pをとり,点Pから3辺(またはその延長)に下ろした垂線の足を点D,E,Fとする.この3点は同一直線(シムソン線)上にある.シムソン線の包絡線はデルトイドを描く.

 もっと詳細にいうと,シムソン線は9点円を内接円にもつように描かれたデルトイドに接する.

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【1】シムソン線とデルトイド

 シムソン線というのは三角形の外接円上の任意の1点から3辺(またはその延長線)に下ろした垂線の足を結ぶ直線のことで,垂線の足は一直線上に並ぶところが面白いところです.初めてデルトイド(三星形)の研究を行ったのはオイラー(1745年)ですが,19世紀の数学者シュタイナーがシムソン線の包絡線として研究したところから,デルトイドはシュタイナーのハイポサイクロイドとも呼ばれています.

 デルトイドがもつ性質のひとつは外接円さえ同じであれば,三角形の形に関係なく,同じ形のデルトイドが得られるということです.もう一つの性質はデルトイドで両端を仕切ったシムソン線の長さは一定で,その値は転円の半径をr(すなわち定円の半径を3r)とすると,4rになります.

 三角形の各辺の中点,垂線の足,垂心と各頂点を結ぶ線分の中点の9点は同じ円上にあります(フォイエルバッハの9点円).三角形の9点円Qと同心で,半径がその3倍の定円Q’を導線として,Qを通るシムソン線(3本ある)がQ’と交わる点Sにおいて,最初Q’に接していた9点円と同大の円をQ’の内側をころがすとき,最初Sにあった点の描く軌跡がこのデルトイドです.この結果はシュタイナーが初等幾何学的に示しました.

 シムソン線は9点円を内接円にもつように描かれたデルトイドに接するというわけです.

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 △ABCの各辺の中点,各頂点から対辺に下ろした垂線の足,頂点と垂心との中点の合計9点は同一円周上にあります(9点円).その中心Qは外心と垂心の中点である.(点Qを通るシムソン線は3本ある).

 Qを中心として半径が9点円の3倍の円Q’を描き,点Qを通るシムソン線3本がQ’と交わる点をSとする.3個のSはQ’を120°ずつ3等分した位置に来る.

 そのひとつをとり,Q’の1/3の半径の円ΓをそこでQ’に内接させる.円Γ’に沿って内転点させるとデルトイドを描く.

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