■ユークリッド・マリン数列(その6)

 任意の素数pnまでの素数をすべて掛け合わせ,それに1を足して得られる数は,素数は無限に存在するというユークリッドの証明に使われるため,ユークリッド数よ呼ばれる.

  N=p1p2・・・pn+1

によって,素数が与えられることはよくある.

  N1=2  (素数)

  N2=2+1=3  (素数)

  N3=2・3+1=7  (素数)

  N4=2・3・5+1=31  (素数)

  N5=2・3・5・7+1=211  (素数)

  N6=2・3・5・7・11+1=2311  (素数)

  N7=2・3・5・7・11・13+1=30031=59・509  (非素数)

 pn=13の場合は素数ではなく合成数である.ユークリッド数によって,素数が与えられることはよくあるといったが,実は素数であるユークリッド数は非常に珍しい.pn=11の次に登場するのはpn=31,その次はpn=379,pn=1019,pn=1021,・・・と続く.

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 ユークリッド数を次の漸化式により定義する.

  en=e1e2・・・en-1+1

  e1=1+1=2  (素数)

  e2=2+1=3  (素数)

  e3=2・3+1=7  (素数)

  e4=2・3・7+1=43  (素数)

  e5=2・3・7・43+1=1807=13・139  (非素数)

  e6=2・3・7・43・1807+1=3263443  (素数)

  e7〜e17  (非素数,多分残りのenも非素数)

 ユークリッド数はすべて互いに素数である.今回のコラムでは,ユークリッド数を表す閉じた公式

  en=[E^2^n×1/2],Eは定数でE〜1.264

を紹介する.

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  en=e1e2・・・en-2en-1+1=(en-1−1)en-1+1=en-1^2−en-1+1

  en−1/2=(en-1−1/2)^2+1/4

  an=2^-nlog(en−1/2)

  bn=2^-nlog(en+1/2)

とすると

  en=[E^2^n+1/2]

は,an≦E<bnと等価である.しかも,

  an-1<an<bn<bn-1

であるから,n→∞のとき,exp(an)=Eとすればよい.

 さらに,

  E^2=3/2・Π(1+1/(2en−1)^2)^1/2^n〜(1.26408473530530111)^2

 この式から作り出されるすべてのユークリッド数は定数Eのなかにそっと埋め込まれている.ユークリッド数に依存しない別のEの式を見つけない限り,ユークリッド数が実際に何なのかはわからないのである.

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