■整数の平方根の連分数(その14)

【2】平方根のディオファントス近似

 aがx^2=2の解ならばa=2/aが成り立ちます.aがいくらか不正確,たとえば過小評価であるならば,2/aは過大評価となります.過小評価と過大評価の中間(算術平均)はaと2/aのいずれよりもよい評価となります.

 かくして算術平均:

  an+1=1/2(an+2/an)

によって定義される数列は√2に収束することになります.この場合,2の平方根をニュートン法x:=x-f(x)/f'(x)で求めるのと同じことになります.ニュートン法の幾何学的意味は「初期値x0における関数の勾配を求めて,接線とx軸の交点を求める.この点において,同様の作業を行うとxは順次解に近づいていく.」と解釈されます.

 ここでは,これとは別の√2に収束する数列を考えることにします.まず

  (1+√2)^n=an+bn√2

  (1−√2)^n=an−bn√2

を満足させるような整数列{an},{bn}を考えます.これらの数列は

  an^2−2bn^2=(−1)^n

となる関係式で結ばれていて,

  an/bn→ √2

ですから,√2に最も近い分数を与えることがわかります(最良近似).

  an+1+bn+1√2=(1+√2)^n(an+bn√2)

          =(an+2bn)+(an+bn)√2

より

  an+1=an+2bn,bn+1=an+bn

  an+1=an+2bn=an+2(an-1+bn-1)

 =an+an-1+(an-1+2bn-1)=2an+an-1

  bn+1=an+bn=(an-1+2bn-1)+bn

 =(an-1+bn-1)+bn+bn-1)=2bn+bn-1

より

  an+1=2an+an-1,bn+1=2bn+bn-1

 α,βを2次方程式x^2−2x−1=0の根1±√2として,

  an+1−αan=β(an−αan-1)=β^2(an-1−αan-2)=・・・=β^(n-1)(a2−αa1)

α,βを入れ替えると

  an+1−βan=α^(n-1)(a2−βa1)

  an+1−αan=β^(n-1)(a2−αa1)

 したがって,整数列{an}の一般項は

  an={α^(n-1)(a2−βa1)−β^(n-1)(a2−αa1)}/(α−β)

α=1+√2,β=1−√2,初期値をa1=1,a2=3とすると

  an=1/2{(1+√2)^n+(1−√2)^n}

 整数列{bn}でも同じ漸化式ですから,同じ一般項になります.

  bn={α^(n-1)(b2−βb1)−β^(n-1)(b2−αb1)}/(α−β)

初期値をb1=1,b2=2とすると

  bn=1/2√2{(1+√2)^n−(1−√2)^n}

 ここで,n→∞のとき(1−√2)^n→0ですから

  an/bn→ √2

となるのを確かめることができます.

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 同様にして,√3の最良近似では

  (2+√3)^n=an+bn√3

  (2−√3)^n=an−bn√3

より

  an+1=4an−an-1,bn+1=4bn−bn-1

 α,βを2次方程式x^2−4x+1=0の根2±√3として,初期値をa1=1,a2=2,a3=7,b1=0,b2=1,b3=4とすると

  an/bn→ √3

となります.

 近似分数列{an/bn}で非常によく近似できる実数αについて

  |α−an/bn|<1/bn^2

が成立するならば,αは無理数です(ディリクレの定理).

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