■ロータリーエンジンはこれから何処へ向かうのか?(その13)

【2】ペリトロコイド曲線とは

現行のロータリーエンジンは,ルーローの三角形型のローターが偏心回転してできる中央がややへこんだ繭型曲線を描く.これが2ノードのペリトロコイド曲線で,原点を中心とする半径aの円の円周上を等速αで公転する点があり,その点の周りを半径b・等速βで自転する点の軌跡

x=a・cos(αt) + b・cos(βt)

y=a・sin(αt) + b・sin(βt)

として表すことができる.α/βが有理数のとき周期運動となり,ロータリーエンジンのステーターは,α=3, β=1とおいて

x=a・cos(3t) + b・cos(t)

y=a・sin(3t) + b・sin(t)

で表される.→【補1】

ペリトロコイド曲線の工学的な応用をもうひとつあげると,1914年,蒸気機関で有名なジェームズ・ワットの子孫であるハリー・ジェームズ・ワットが四角形の穴をあけられるドリルの特許(PAT No. 1241175)を取得,ワットの蒸気機関から130年後のことであった.四角形の穴とはいっても,

x=a・cos(3t) + b・cos(-t)

y=a・sin(3t) + b・sin(-t)

で表される近似的な正方形であって,そこに直線は含まれていない.

このように,ロータリーエンジンと四角い穴をあけるドリルは,ローターの回転方向が反対向きになっているだけで,数学的には共役=等価な問題と考えることができる.このとき,ロータリーエンジンを二角の穴とみなせば,四角い穴をあけるドリルとロータリーエンジンは表裏一体の関係にあることが理解される.一般に,概(n−1)角形のドリルでn角の穴と(n−2)角の穴をあける問題は共役になっていて (n⇔n−2 対称性),一方が凸な穴であれば他方も凸,一方が非凸な穴であれば他方も非凸になることは簡単な計算で確かめることができる.→【補2】

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