■オイラーのトーシェント関数(その46)

 実は,円周法に基づく漸近公式の結果を正確に証明するだけでも,長くてこみ入った理論が必要になります.そこで漸近公式の概要だけを簡単に述べますが,σ(k)をkの約数の和とすると,p(n)に対する漸化式

  p(n)=1/nΣσ(k)p(n-k)

において,σ(k)の漸近的振る舞い

  1/n^2Σσ(k)〜π^2/12

を用いると,nが大きい場合の分割数の漸近挙動

  p(n)〜exp(π√(2n/3))/4n√3

を得ることができます.このことから,p(n)は準指数関数と考えることができます(p(n)^(1/n)→1).

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【1】ディリクレによる約数関数の漸近挙動

 ここで,約数の総和関数σ(k)の漸近挙動

  1/n^2Σσ(k)〜π^2/12

がでましたが,1838年,ディリクレはσ(n)の平均値が,大きいnに対して  1/nΣσ(k)〜π^2n/12

を示しました.

  1/25Σσ(k)=20.88 → ディリクレの評価はπ^2・25/12=20.56

  1/50Σσ(k)=41.6 → ディリクレの評価はπ^2・50/12=41.12

  1/100Σσ(k)=82.99 → ディリクレの評価はπ^2・100/12=82.25

 また,約数の個数関数d(k)の平均値の漸近挙動について,ディリクレは

  1/nΣd(k)〜ln(n)-2γ+1

を示しました.

  1/25Σd(k)=3.48 → ディリクレの評価はln(25)-2γ+1=3.37

  1/50Σd(k)=4.14 → ディリクレの評価はln(50)-2γ+1=4.07

  1/100Σd(k)=4.82 → ディリクレの評価はln(100)-2γ+1=4.76

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