■制限のある分割から(その15)

nが大きい場合の分割数の漸近挙動

  p(n)〜exp(π√(2n/3))/4n√3

を得ることができます(ハーディーとラマヌジャン,1918年).このことからp(n)は準指数関数と考えることができます(p(n)^(1/n)→1).

 また,

  p(n)≦p(n-1)+p(n-2)

が成り立つことより,分割数の増大速度はファイボナッチ数で上から抑えられることが示されます.したがって,黄金比φ=(√5+1)/2とおくと上界は

  p(n)<φ^n.

 なお,ラマヌジャンはp(n)が満たす合同式について

  p(5n+4)=0  mod5

  p(7n+5)=0  mod7

  p(11n+6)=0  mod11

を予想し,それらを証明しています.

(証)φ(q)=Π(1-q^k)とおく.

  Σp(5n+4)q^n=5{φ(q^5)}^5/{φ(q)}^6

の右辺の展開を考えると合同式が証明される.

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 ロジャーズ・ラマヌジャンの第1恒等式の母関数は

  Σq(n)x^n=Π1/(1-x^(5n-4))(1-x^(5n-1)=Σq^(n^2)/(q)n

第2恒等式では

  Σq(n)x^n=Π1/(1-x^(5n-3))(1-x^(5n-2)=Σq^(n^2+n)/(q)n

 ヤコビの3重積公式を用いると,さらに

  Σq^(n^2)/(q)n=1/(q)nΣ(-1)^rq^{(5r^2-r)/2}

  Σq^(n^2+n)/(q)n=1/(q)nΣ(-1)^rq^{(5r^2+3r)/2}

と変形できる.

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【6】オイラーの五角数定理

 

 ある恒等式が分割の立場から何を意味するかという逆問題を考えてみましょう.分割数p(n)の母関数の逆数

  Π(1-x^n)=(1-x)(1-x^2)(1-x^3)・・・

を考えます.これを展開すると,級数中の係数がすべて0か±1の級数

  Π(1-x^n)=1-x-x^2+x^5+x^7-x^12-x^15+x^22+x^26-x^35-x^40+x^51+・・・

       =Σ(x^(6m^2-m)-x^(6m^2+5m+1))

が得られますが,これが何を意味しているかを発見できるでしょうか?

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 一見したところ,何を意味しているのかすら明らかではないのですが,この級数は,mが負になる項も含んだ

  Π(1-x^n)=Σ(-1)^mx^(m(3m-1)/2))

の形にまとめられ,ここで指数の引数がm(3m−1)/2,すなわち,1,5,12,22,35,51,・・・という数列がピタゴラスの五角数であることから,五角数定理と呼ばれています.

 

 この恒等式は,級数中のx^nの係数がすべて0か±1なのですが,組合せ論の解釈から,偶数個の異なる整数への分割数と奇数個の異なる整数への分割数の差

  peven(n)-podd(n)=(-1)^m    n=m(3m+1)/2

  peven(n)-podd(n)=0      その他の場合

を表すものと考えられます.

 

 たとえば,n=8の場合,偶数個の異なる整数への分割は7+1=6+2=5+3の3通り,奇数個の異なる整数への分割は8=5+2+1=4+3+1の3通りですから,その差は0となります.

 

 個数の差があるのはn=m(3m+1)/2またはn=m(3m−1)/2,すなわち,

  n=1,2,5,7,12,15,22,26,・・・

の場合で,このn=m(3m±1)/2を5角数といいます.nが5角数の場合に限ってpeven(n)とpodd(n)が異なるのですが,五角数は分割問題でも役立つというわけです.

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