■集合の分割(その15)

【1】カタラン数の漸化式とオイラーの問題

 n角形は,対角線によってn−2個の三角形に分割することができる.ここでは,凸多角形(n+2角形)に対角線を描いて,それをいくつかの凸多角形に分けるのではなく,対角線を互いに交わらないように引いて三角形分割する問題を考えよう.

[Q]凸n+2角形に互いに交わらないn−1本の対角線を引いて三角形分割する仕方の数c(n)は?

[A]この問題はオイラーが提起した幾何学問題である(オイラーの問題).三角形は1通りと数える.4角形では2通り,5角形では5通りあることは数えられても,6角形ではそう簡単にはいかない(6角形に対しては14通りある).

 6角形の場合,たとえばある対角線を引いて3角形と5角形,4角形と4角形,5角形と3角形に分割することができるが,そのような分割の仕方を場合分けすることで,積和型の漸化式

  c(n+1)=c(0)c(n)+c(1)c(n−1)+・・・+c(n)c(0)

が得られる.ただし,c(0)=c(1)=1とする.

カタラン数c(n)はnの増加に応じて急激に増加するが,漸化式を用いると簡明に得ることができる.

  c(0)=1,c(1)=1,c(2)=2,c(3)=5,

  c(4)=14,c(5)=42,c(6)=132,

  c(7)=429,c(8)=1430,c(9)=4862,・・・

 なお,凸n角形を対角線で三角形分割する仕方は何通りあるかという問題は,回転や反転で同型になるものを同じと数えると,

  1,1,1,3,4,12,27,82,228,733,2282,7528,・・・

となることを付記しておく.

 カタラン数はいろいろなシーンで登場し,200を超える応用問題があるという.そのひとつがオイラーの問題である.オイラーは,凸多角形を対角線によって三角形分割する方法は何通りあるかという問題を問うた.小さい方から並べると

  1,2,5,14,42,132,429,・・・

 オイラーは研究を深め,これらの数がカタラン数であることをつきとめた.円卓を囲む人たちが手を交差せずに握手できる方法の数は,カタラン数になっているのである.応用問題をいくつか掲げたい.

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