■制限のある分割から(その11)

[1]ロジャーズ・ラマヌジャンの第1恒等式

  「1の位が1,4,6,9の数への分割と各因子の差が2以上ある分割とは同数ある.」

 1の位が1,4,6,9の数とはmod5で±1と合同になる整数のことです.分割の構成数の差が2以上という制限を設けた分割と構成数が5n+1または5n+4の分割は恒に等しいというののが第1恒等式で,例えば5を1,4,6,9に分割するのは4+1,1+1+1+1+1の2通り,各因子の差が2以上ある分割は5,4+1の2通り.

(証)ヤコビの3重積公式を使えば

  Σs(n)x^n=Σq^(k^2)/(1-q)(1-q^2)・・・(1-q^k)=1/(1-q^5m-1)(1-q^5m-4)

すなわち

  1+q/(1-q)+q^4/(1-q)(1-q^2)++q^9/(1-q)(1-q^2)(1-q^3)+・・・

  =1/(1-q)(1-q^4)(1-q^6)(1-q^9)(1-q^11)(1-q^14)(1-q^19)・・・

である.

 この分割恒等式は無名の数学者ロジャーズ(1894),また彼とは独立にラマヌジャン(1913)によって得られました.ロジャース・ラマヌジャン恒等式は,最初ロジャースにより発見されたのですが,誰の興味も惹かず忘れ去られていたところ,ラマヌジャンにより別証明が与えられたというわけです.

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[2]ロジャーズ・ラマヌジャンの第2恒等式

  「1の位が2,3,7,8の数への分割と因子は2以上で各因子の差が2以上ある分割とは同数ある.」

 これはmod5で±2と合同になる整数のことです.例えば5を2,3,7,8に分割するのは3+2の1通り,因子は2以上で各因子の差が2以上ある分割は5の1通り.

(証)ヤコビの3重積公式を使えば

  Σt(n)x^n=Σq^(k(k+1))/(1-q)(1-q^2)・・・(1-q^k)=1/(1-q^5m-2)(1-q^5m-3)

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[3]シューアの分割恒等式

  「mod6で±1と合同になる整数への分割と,各因子の差が3以上あり,連続する3の倍数を含まないような分割とは同数ある.」

 例えば5をmod6で±1と合同になる整数に分割するのは5の1通り,各因子の差が3以上あり,連続する3の倍数を含まないような分割は5の1通り.

(証)

  Σu(n)x^n=Π1/(1-x^6k-1)(1-x^6k-5)

  Σv(n)x^n=Π(1+x^3k-1)(1+x^3k-2)

  Σw(n)x^n=Π(1+x^k+x^2k)

の母関数は一致する.

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