■連分数の測度論(その43)

 数を連分数で表示すると数字1が大量に出現することに気づきます.そこで,連分数の部分商の分布について考えてみます.

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【1】ガウスの定理

 1828年,ガウスは整数部を除いた[0:a1,a2,a3,・・・,an]がxより小さい小数となる確率は

 P([0:a1,a2,a3,・・・,an]<x)=log2(1+x)+εn

で与えられることを証明しました.

 誤差項に関して,1928年にクズミンはほとんどすべての連分数に対して,

  εn=O(q^√n)  0<q<1

1929年にレヴィは

  εn=O(q^n)  q=0.7

であることを示しました.どちらも誤差項εnは漸近的に0になることを示しています.

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 ガウスはまた,連分数の部分商の確率密度関数は

  P(an=k)=P(k<εn<k+1)=P(εn<k+1)−P(εn<k)

→log2(1+1/k)−log2(1+1/(k+1))=log2(1+1/k(k+2))

であることを示しました.

 an=1,2,3,・・・に対する確率は大部分の小数部で等しいのと対照的に,連分数では減少していきます.そして,十分大きなnに対する部分商の起こる確率Pは

k        1  2  3  4  5  6  7  8 9+

P(an =k)  .41 .17  .09  .06  .04 .03 .02 .02 .16

となることがわかります.

大部分の小数部に対する10桁の確率が等しいのとは対照的に、.041,.017,.09のように減少していくのです。

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【2】ヒンチンの定理

 次にanの幾何平均値を求めてみます.1935年,ヒンチンは一般の連分数

  [a0:a1,a2,a3,・・・,an,・・・]

の大多数についてあてはまる法則を発見しています.

 ヒンチンの定理とは,幾何平均(a1a2・・・an)^1/nの値がn→∞のとき,ある無限乗積から定まる定数

  (a1a2・・・an)^1/n→Π(1+1/k(k+2))^logk/log2=2.685452001・・・

に収束するというものです.κ=2.68545・・・はヒンチンの定数として知られています.また,近似分数の分母が

  (Bn)^1/n→exp(π^2/12log2)=3.27582・・・

になることを示しました.

 ただし,分母に明確なパターンのある代数的数やeをはじめとするいくつかの超越数は例外になります.

  (eの場合,(a1a2・・・an)^1/n→0.6259・・・)

 算術平均は発散するのに対し幾何平均は収束するというわけですが,ほとんどすべての連分数の場合,調和平均も収束し,その極限値は

  n/(1/a1+1/a2+・・・+1/an)→1.74540568・・・

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