■整数の拡大と素因数分解の一意性(その20)

【1】 フェルマー予想

ピタゴラス数は

  3^2+4^2=5^2

  5^2+12^2=13^2

  133^2+156^6=205^2

など無限にある.ところが

  x^3+y^3=z^3

となると

  6^3+8^3=9^3−1

など,ニアミス解しかみつからない.

  x^4+y^4=z^4

  x^5+y^5=z^5

  x^6+y^6=z^6

でも同様であったことから,一般に

  x^n+y^n=z^n

には解がないはずであるとフェルマーは予想した.

フェルマー予想とは

『x^n+y^n=z^nでn≧3のとき,x,y,zは正の整数解をもたない』

・・・フェルマー自身は「驚くべき証明を私は見つけたが,これを記すには余白が狭すぎる」という謎めいた言葉を残している.

 フェルマーが愛読した古代ギリシャのディオファントスによる本「アリスメティカ(算術)」の欄外の余白にこの書き込みをしたのは1637年頃で,たった8文字で書かれたこの単純な式はフェルマー予想と呼ばれ,人類の頭を悩まし続け,多くの高名な数学者がフェルマー予想に挑戦したにもかかわらずことごとくそれを退けてきました.

 まだ見つかってはいないが,みつかれば史上最大となるはずの解があるかもしれない.・・・ワイルズは

  x^n+y^n=z^n

には解がないという130ページの論文を発表して,フェルマー問題に終止符を打った.

フェルマー予想は360年ものあいだ未解決の数学的難問であったのですが,1994年,イギリス人で米国プリンストン大学の数学者ワイルズがその証明に成功し,かくして「予想」は「定理」となりました.難攻不落のフェルマー城はついに落城したのです.

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