■ガンマ関数とボーア・モレルップの定理(その44)

  ∫1/(1-x^2)^(1/2)dx

は円(2次曲線),

  ∫1/(1-x^4)^(1/2)dx

はレムニスケート(4次曲線)に対応していますが,周長が

  ∫1/(1-x^3)^(1/2)dx

で表される曲線はどのようなものになるでしょうか?

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【1】変形バラ曲線

 より一般に,「周長が

  ∫1/(1-x^n)^(1/2)dx

で表される曲線は

  r^(n/2)=cos(n/2・θ)

である.」

(証)

  {1+(rdθ/dr)^2}^(1/2)=1/(1-r^n)^(1/2)

  rdθ/dr=(r^n/(1-r^n))^(1/2)

  dθ/dr=(r^n-2/(1-r^n))^(1/2)

  dr/dθ=((1-r^n)/r^n-2)^(1/2)

 一方,

  r^(n/2)=cos(n/2θ)

  n/2・r^(n/2-1)dr/dθ=n/2・sin(n/2θ)

  r^(n/2-1)dr/dθ=sin(n/2θ)

  dr/dθ=sin(n/2θ)/r^(n/2-1)=((1-r^n)/r^n-2)^(1/2)

 この曲線はバラ曲線(正葉曲線)の変形版になっている.円(n=2)もレムニスケート(n=4)もこの曲線族に属する.n=1の場合,曲線

  r^(1/2)=cos(1/2・θ)

  r=cos^2(1/2・θ)=(1+cosθ)/2

はカージオイドとなる.

 なお,nが奇数とき4n次代数曲線,nが偶数のときn次代数曲線になることが示される.

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【2】弧長積分

  f(x)=1/(1-x^2)^(1/2)

のとき,

  sin^(-1)z=∫(0,z)f(x)dx

であるから,

  2∫(0,1)f(x)dx=3.141592・・・=π

  ∫(0,1)f(x)dx=π/2

となる.それでは,

  f(x)=1/(1-x^4)^(1/2)

としたとき,

  ∫(0,1)f(x)dx=1.311028・・・=ω/2

は,どのようにすれば得られるのでしょうか?

 ベータ関数において,a=m/n,b=1/2とおき,t=x^nと置換すると,

  ∫(0,1)x^(m-1)/(1-x^n)^(1/2)dx=Γ(m/n)√π/nΓ(m/n+1/2)

したがって,

 (m,n)=(1,1)のとき,∫(0,1)1/(1-x^1)^(1/2)dx=2

 (m,n)=(1,2)のとき,∫(0,1)1/(1-x^2)^(1/2)dx=π/2

 (m,n)=(1,3)のとき,∫(0,1)1/(1-x^3)^(1/2)dx=Γ^3(1/3)/2^(4/3)3^(1/2)π

 (m,n)=(1,4)のとき,∫(0,1)1/(1-x^4)^(1/2)dx=Γ^2(1/4)/2^(5/2)π^(1/2)

が得られます.

  ∫(0,1)1/(1-x^1)^(1/2)dx=2

  ∫(0,1)1/(1-x^2)^(1/2)dx=π/2

は初等的にも得ることができます.一方,

  ∫(0,1)1/(1-x^3)^(1/2)dx=Γ^3(1/3)/2^(4/3)3^(1/2)π

  ∫(0,1)1/(1-x^4)^(1/2)dx=Γ^2(1/4)/2^(5/2)π^(1/2)

は,特別な数と楕円積分を関係づけるものになっています.

 なお,

  ∫(0,1)1/(1-x^3)^(1/2)dx=Γ^3(1/3)/2^(4/3)3^(1/2)π

を得るには,ガンマ関数の乗法公式(倍数公式)

  Γ(x/2)Γ((x+1)/2)=π^(1/2)Γ(x)/2^(x-1)

と相反公式(相補公式)

  Γ(x)Γ(1-x)=π/sinπx

また,

  ∫(0,1)1/(1-x^4)^(1/2)dx=Γ^2(1/4)/2^(5/2)π^(1/2)

を得るには乗法公式を用いています.

[1]n=1:Γ(1)√π/Γ(3/2)=2

[2]n=2:Γ(1/2)√π/2Γ(1)=π/2=1.5708

[3]n=3:Γ(1/3)√π/3Γ(5/6)=1.40218

[4]n=4:Γ(1/4)√π/4Γ(3/4)=1.31103

[5]n=5:Γ(1/5)√π/5Γ(7/10)=1.25373

[6]n=6:Γ(1/6)√π/6Γ(2/3)=1.21433

[7]n→∞のとき,

  ∫(0,1)1/(1-x^n)^(1/2)dx=Γ(1/n)Γ(1/2)/nΓ(1/n+1/2)→Γ(1/n)/n=Γ(1+1/n)→Γ(1)=1

この結果は図形的に考察すれば明らかである.

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【3】第1種楕円積分の標準形への還元

 積分

  I=∫(c,1)dx/(1−x^3)^1/2

を考える.変換

  y=(λx+μ)/(νx+ρ),x=(−ρy+μ)/(νy−λ)

を適当に選ぶことにより,常に

  dy/(1+my^2+ny^4)^1/2

の形に還元できる.

  λ=−1,μ=1−√3,ν=1,ρ=−1+√3

 x=cに対するyの値を

  y1=(c−1+√3)/(−c+1+√3)

とおくと

  I=1/4√3∫(y1,1)2dy/((1−y^2)(2−√3+(2+√3)y^2)^1/2

 ここで,y^2=1−z^2,z1^2=1−y1^2とおくと第1種楕円

  I=1/4√3∫(0,z1)dz/((1−z^2)(1−k^2z^2)^1/2=1/4√3F(k,φ1)

となる.ただし,

  k=(√2+√6)/4,k^2=(2+√3)/4

  φ1=arccos((c−1+√3)/(−c+1+√3))=arcsin((1−y1^2)^1/2)

  sinφ1=z1,z1=(1−y1^2)^1/2

  c=1→z1=0

  c=0→z1=(4√3−6)^1/2=α

 ところで,第1種楕円積分の標準形

F(k,x)=∫(0,x)1/{(1-x^2)(1-k^2x^2)}^(1/2)f(x)dx

については加法公式が使える.これで,この曲線の弧長を求める問題は,加法公式

  z={x(1+my^2+ny^4)^1/2+y(1+mx^2+nx^4)^1/2}/(1−nx^2y^2)

  m=−(1+k^2),n=k^2,α=(4√3−6)^1/2

の問題に還元されたことになる.

 倍角公式

  x’=2xy/(1−nx^4)=2x(1+mx^2+nx^4)^1/2/(1−nx^4)

より,2等分点に対応する楕円曲線上の点

  2x(1+mx^2+nx^4)^1/2/(1−nx^4)=α

の解をx=βとすると,

  1−((c−1+√3)/(−c+1+√3))^2=β^2

  c=√3+1−2√3/((1−β^2)^1/2+1)

がこの曲線の2等分点である.

  2x(1+mx^2+nx^4)^1/2/(1−nx^4)=α

を求めたところ,解析解

  x=−1+√3

が得られた.

したがって,2等分点は

  c=√3+1−(2√3+3)(1−√(2√3−3)=0,671618(→作図可能).4等分点,8等分点も同様に計算することができる.

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