■ガンマ関数とボーア・モレルップの定理(その39)

 2定点(−a,0),(a,0)からの距離の和が一定となる点の軌跡は楕円,差が一定の点の軌跡は双曲線です.また,商が一定の点は円(アポロニウスの円)を描きます.それでは積が一定の点はどのよう軌跡を描くでしょうか.

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 平面上の2点P1(a,0),P2(−a,0)に対して

  P1M・P2M=(一定)

を満たす点M(x,y)の軌跡を考える.

  {(x−a)^2+y^2}{(x+a)^2+y^2}=c^2

  {x^2+y^2+a^2−2ax}{x^2+y^2+a^2+2ax}=c^2

  {x^2+y^2+a^2}^2−4a^2x^2=c^2

  {x^2+y^2}^2+2a^2{x^2+y^2}+a^4−4a^2x^2=c^2

  {x^2+y^2}^2−2a^2{x^2−y^2}+a^4=c^2

 r^2=x^2+y^2,x=rcosθを代入すると

  r^4−2a^2r^2cos2θ+a^4=c^2

 c=a^2のとき

  r^2=2a^2cos2θ

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< すなわち,定数cが2定点間の距離の半分aの2乗に等しいとき,レムニスケート(双葉曲線)と呼ばれます.レムニスケートは8の字形(8を90°回転させ横向きにした∞形)をしていて,その直交座標系での方程式は4次曲線(x^2+y^2)^2=2a^2(x^2−y^2),極座標系ではr^2=2a^2cos2θとなります.

 したがって,極座標による式のほうが,直交座標による式よりかるかに簡単です.極座標はベルヌーイの時代より前にもときどき使われていたのですが,極座標を広範囲に使用し,多くの曲線に適用してさまざまな性質を最初に見つけたのは,ヤコブ・ベルヌーイでした.

 さらに,a=1/√2とおくと,レムニスケートの弧長Lは

  L=∫(0,r)dr/{1ーr^4}^(1/2)

となります.

 このようにして,ベルヌーイはレムニスケートの弧長を

  f(x)=1/(1-x^4)^(1/2)

  u=F(z)=integral(0-z)f(x)dx

と表しました.これがレムニスケート積分と呼ばれる典型的な楕円積分です.ただし,レムニスケート積分が第1種楕円積分なのに対し,楕円弧長を求める積分は第2種楕円積分であり,パラレルな関係にはありません.

 F(z)の逆関数であるレムニスケートサインsl(u)を求めてみることにしましょう.実際に1/(1-x^4)^(1/2)を2項展開し,さらに項別積分すると

  F(z)=z+1/10z5+1/24z9+5/208z16+・・・

この逆関数のべき級数展開は

  sl(u)=u-1/10u5+1/120u9+11/15600u13+・・・

   =u(1-1/10u4+1/120u8+・・・)

   =ug(u4)

となります.

 また,

  ∫(0,1)f(x)dx=1.311028・・・=ω

とおくことにしましょう.4ωがレムニスケートの全長です.すなわち,レムニスケートサインは周期4ωをもつことがわかります.円に類比すると,レムニスケートの定数ωは円に対するπと同じ役割を演じていることになります.さらにまた,レムニスケートには円に共通する性質があり,定規とコンパスだけで奇数のn等分することができる必要十分条件はnがフェルマー素数(n=22^m+1の形の素数:3,5,17,257,65537)であることです.

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