■フラクタル構造と非微分可能曲線(その5)

フラクタル構造はいたるところで微分不可能な連続曲線という病理的な性質をもっている.今回のコラムでは導関数をもたない連続関数について考察する.

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【2】カントルのミドル・サード集合

 実数t(0≦t≦1)は3進表現

  t=a0/3+a1/3^2+・・・+an/3^n+1+・・・

をもつが,カントルのミドル・サード集合Γはanが0または2のみをとる実数tの集合として定義してよい.

 したがって,

  Γ={t|t=2a0/3+2a1/3^2+・・・+2an/3^n+1+・・・=Σ(0,∞)2an/3^n+1:ただし,anは0または1のみをとる}

(2進表現)と等価である.

   f(t)=0      (0≦t≦1/3)

   f(t)=3t−1   (1/3≦t≦2/3)

   f(t)=1      (2/3≦t≦1)

この定義をすべての実数tに拡張して,f(t)は周期2の周期的偶関数とする.

  f(−t)=f(t),f(t+2)=f(t)

 tがΓに含まれるとき,この関数の重要な性質はΓ上で恒等式

  t=Σ(0,∞)2f(3^nt)/3^n+1

  an=f(3^nt)=0または1

が成り立つことである.

 このことを用いると,t(0≦t≦1)をΓに制限してもペアノ曲線が正方形や立方体を覆うことができるいたるところで微分不可能な連続曲線であることが証明されるのである.

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