■平行曲線(その5)

【5】平行曲面

 

 空間の曲面に対しても「平行曲線」と同じこと,すなわち空間全体をただ一回もれなく覆う「平行曲面」を考えてみると,平面,球面,直円柱面の3種類しかないことが証明されています(1918年).

 

 平行曲面の考え方は,幾何光学におけるホイヘンスの原理にすでに認めることができます.ホイヘンスの原理とは,光を波とみなすとき,波面の各点から波が新たに発生すると思って半径一定の球面を描くと,その球面の包絡面が次の波面を決めるという光の進行原理のことです.

 

 平面,球面,直円柱面はどれも平均曲率が一定の曲面です.曲面にはガウス曲率と平均曲率という2つの曲率があって,平均曲率とは,曲面上の点における最大曲率と最小曲率の平均を指します.シャボン玉(同じ体積を囲む曲面のなかで表面積が最小の曲面)は平均曲率が0でない一定の曲面,石けん膜(縁を与えたときそれを張る面積が最小の曲面)は平均曲率が0の曲面(極小曲面)です.

 

 曲線のときとは異なり,平均曲率一定曲面は掃いて捨てるほどあります.にもかかわらず,平均曲率一定曲面のなかで,平行曲面も平均曲率一定曲面であるようなものは平面,球面,直円柱面しかないのです.さらに,高次元超曲面を考えてみても,その平行超曲面は平均曲率一定であるものは,超平面,超球面,超直円柱面しかないこと,つまり3次元空間と同じ結果になることがセグレによって証明されています(1938年).

 

 なお,ホップは縁のない平均曲率一定曲面は球面だけだろうと予測したのですが,自分自身との交差を許すと球面以外にいくらでもあることがわかっています(ヴェンテ:1984年).この球面とは異なる平均曲率一定曲面の反例の発見を契機に,平均曲率一定曲面の研究は大きな進展をみせることとなりました.

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