■素数と数列(その3)

自然数の中から等間隔になる数を拾い出すことは至極簡単,当たり前である.そこで,ここでは素数の中に等間隔の並ぶ素数列を考えると,双子素数予想よりさらに深遠なトピックスとして「長さkを勝手に決めると,素数列の中から長さkの等差数列を拾い出すことができる」という有名な定理がある.

 等差数列が素数だけで構成されるために,公差に課される条件は偶数でなければならない.とくに,長さが4以上の等差素数列を作るためには,公差は偶数かつ3の倍数でなければならない.すなわち6の倍数でなければならない.3個組,4個組,5個組,・・・,k個組.たとえば,・・・

(3,5,7)3個組(公差2)

(3,7,11)3個組(公差4)

(29,59,89)3個組(公差30)

(11,17,23,29)4個組(公差6)

(7,19,31,43)4個組(公差12)

(5,23,41,59)4個組(公差18)

(5,11,17,23,29)5個組(公差6)

(5,17,29,41,53)5個組(公差12)

(11,41,71,101,131)5個組(公差30)

(7,37,67,97,127,157,187)7個組(公差30)

(7,157,307,457,607,757,907)7個組(公差150)

[1]3−5−7は等差数列をなす3つの素数列の最初のものである.

[2]5−11−17−23は等差数列をなす4つの素数列の最初のものである.

[3]5−11−17−23−29は等差数列をなす5つの素数列の最初のものである.

[4]7−37−37−97−127−157は等差数列をなす6つの素数列の最初のものである.

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【1】エルデシュ予想

1930年代にエルデシュは,「自然数列{ai}がΣ1/ai=∞を満たすならば,自然数列{ai}は任意の長さの等差数列を含む」ことを予想した.この予想は数論とエルゴード理論の間に深い関係を発展させる動機となった.

素数の逆数和Σ{1/p)→∞なので,エルデシュ予想を証明すれば各項が素数である任意の長さの等差数列が存在することがわかる.

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【2】セメレディの定理

 3個組,4個組,5個組,・・・ときて,26個組の存在は知られているが,50個組,100個組は存在するだろうか? セメレディの定理(1975年)によると,ある集合の密度が0でなければどのような長さの等差数列もその集合の中に含まれる.すなわち,この定理は集合の元があまり分散されていなければ,どのような長さの等差数列をも含むことを意味している(正確にいうと密度が0の集合に対しては等差数列を含むかどうかについては何も主張していない).

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【3】グリーン・タオの定理

 

グリーン・タオの定理(2004年)はセメレディの定理を素数の集合を含む十分広い範疇の集合に適用できるように精密化されたものになっている.具体的にどのような素数列であるのか決定することはできないのであるが,エルデシュ予想はグリーンとタオによって証明されたのである.

素数のみからなる等差数列,

  a,a+d,・・・,a+(n−1)d

において,「任意に長いn個の素数の等差数列が存在する」(グリーン・タオの定理:2004年),つまり,3個組,4個組,5個組,・・・,n個組.nは100個でも100万個でも好きな数だけ等差数列を作れるのである.ただし,公差dを指定することはできない.

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