■藤原の問題(その2)

ルーローの三角形,藤原・掛谷の二角形はそれぞれ正方形,正三角形に内接しながら回転することができる図形であり,これを応用すれば正方形の穴,正三角形をあけるドリルを作ることができます.

藤原・掛谷の二角形では完全な正三角形の穴をあけることができますが,ルーローの三角形であけられる正方形はその角がごくわずかだが丸くなっていて,穿かれる穴の面積は正方形の面積を1とすると0.9877・・・となります.

0.9877・・・より大きくすることはできません。

===================================

正三角形の3つの頂点を中心にして正三角形の1辺の長さを半径とする円を描くと,正三角形に少し丸みをつけた図形ができる.これがルーローの三角形である.

ルーローの三角形はどの方向の幅も最初の正三角形の1辺の長さとなる.いかなる方向に対しても等しい幅をもっている図形を「定幅図形」と呼ぶ.

平面における定幅図形は円だけではなく,そのような形状は無数にあります.定幅図形の中で最大の面積をもつものは円であり,最小の面積をもつものはルーローの三角形です(ルベーグ1914年).

「定幅図形」であるから,どんな向きにおいても同じ長さを1辺とする正方形のなかにピッタリ収まる.そこでドリルの刃をルーローの三角形にすると四角い穴もあけられることになる.

1.幅dのすべての定幅曲線の周長はπdで等しい(バービエ)

2.定幅曲線のなかで面積が最大になるのは円、最小になるのはルーローの三角形である(ブラシュケ、ルベーグ)

===================================

正3角形に内接しながら回転することできる凸閉曲線は円以外にも存在します.

このような図形の一例が,正三角形の中線を一辺とする正三角形の頂点を中心として,中線の長さを半径とする2個の円弧からなる曲線(藤原・掛谷の2角形)です。この図形を応用すれば正3角形の穴をあけるドリルを作ることが可能になります.

内転形定理(藤原の定理)

1.すべての内転形(凸多角形の各辺に接しながら、その中で1回転できる卵形線)の周長は等しい。

2.正三角形の内転形で面積最小のものは、藤原・掛谷の二角形である。

===================================

卵形線研究

藤原はゲッチンゲン留学中卵形線に大きな興味を抱き,以後卵形線研究は東北大学数学教室の輝かしい業績が生まれることとなった.内転形(凸多角形の各辺に接しながらそのなかで1回転できる卵形線)は,凸多角形が正方形の場合は定幅曲線に他ならず,定幅曲線の概念の拡張になっている.

フルヴィッツはフーリエ級数論を応用して「アステロイドの平行曲線は正三角形の内転形である」、「デルトイドの平行曲線は定幅曲線(平行な支持線間の距離が一定な卵形線)である」ことを証明した.この論文から刺激をうけた藤原は一般的な凸多角形の内転形をフーリエ級数論を応用して解析的に研究した.

また,正n角形の内転形で面積最小のものをAn,接点と正n角形の頂点との距離が最小のものをBnとすると,藤原はA3,B3はともに藤原・掛谷の2角形(半径が正三角形の高さに等しい2つの円弧で囲まれたレンズ型図形)であることを証明した.

A4,B4がともにルーローの三角形であることはそれぞれブラシュケ,藤原が証明している.卵形線論ではブラシュケ(ハンブルグ大学)と東北大学が研究の二大中心をなしていた観がある.

===================================

ルーローの三角形(A4問題の解),藤原・掛谷の二角形(A3問題の解)

===================================