■掛谷定数(その3)

 1917年,掛谷宗一は「長さが1である線分を1回転させるのに必要な最小面積の図形は何か」という問題を提出しました.

 この問題は多くの予想を生み出しました.たとえば,デルトイドでは長さが一定の線分をデルトイドに接しながらスムーズに1回転させることができるので,掛谷はデルトイド(面積π/8)が「掛谷の問題」の解であると予想したのです.

 しかしながら,2n+1個の尖点と円弧をもち,図形全体が内接している円に直交している星状領域(面積:Sn)を考えると,n→∞のとき

  Sn→(5−2√2)π/24<π/11

を示すことができます.この形はフーコーの振り子を何万回もらせたときの形になり,その面積はπ/11よりも小さくなります.

 このようにして,単連結となる最小の星状領域は,面積π/8のデルトイドではなく,別の星状図形であることがブルームとシェーンベルグにより発見されました(1963年).→コラム「デルトイドの幾何学(その2)」参照

[まとめ]長さ1の線分を180°回転してもとと重ねることができるような単連結名領域の最小面積として知られている最良の値は

  Sn→(5−2√2)π/24(.2842582246・・・)<π/11(.285599)

であり,(5−2√2)π/24は「掛谷定数」として知られています.

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ここでは長さが1である線分を1回転させることができる円環領域の面積Sを求めてみることにします。

円環の外側(半径R)

円環の内側(半径r)

とすると

Rsinθ=1/2

rtanθ=1/2

S=πR^2-πr^2=πR^2(1-cos^2θ)=πR^2sin^2θ=π/4

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この円環領域は線分の向きを変えることができるので、掛谷集合です。

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