■アポロニウスの最大最小問題(その14)

【3】法線と焦線(平行曲線の特異点はその曲線の縮閉線上に現れる)

 曲線の曲がり具合を記述する微分幾何学では,曲線の曲率中心の軌跡を縮閉線(エボリュート)といい,縮閉線に対してもとの曲線を伸開線(インボリュート)といいます.このように書いてもピンと来ないでしょうから,表現法を変えますが,曲線Lのまわりに巻かれた糸があり,この糸をぴんと張ったままほどくと糸の自由端によって曲線Mが描かれるとします.MをLの伸開線(インボリュート),LをMの縮閉線(エボリュート)と呼びます.

 縮閉線の接線は伸開線の法線ですから,これら2曲線の間で測った長さは伸開線の曲率半径になります.また,縮閉線は与えられた曲線の曲率中心においてその法線と接するので,縮閉線は与えられた曲線の法線からなる直線族の包絡線を求めることにより得られることがわかります.

 ここで試しに,楕円と円の各点から法線を引いてみてください.円の場合は中心点に法線が集中してしまいます(焦点)が,楕円の場合は4つのカスプをもつ曲線が浮かび上がってきます.楕円:

  x^2/a^2+y^2/b^2=1

の縮閉線は,4つのカスプをもつ曲線(準アステロイド)

  (ax)^(2/3)+(by)^(2/3)=(a^2−b^2)^(2/3)

で,楕円の平行曲線の特異点はその曲線の縮閉線である準アステロイド上に現れるのです.

 平面曲線の法線の集まりによって得られる包絡線はもとの曲線の縮閉線であることが知られています.縮閉線は平行曲線の特異点の軌跡でもあります.ともあれ,ここではアステロイドと楕円とは縮閉線と伸開線という関係にあることがわかりました.平面鏡による焦線として楕円の縮閉線であるアステロイド:x^(2/3)+y^(2/3)=a^(2/3)や双曲線の縮閉線:x^(2/3)−y^(2/3)=a^(2/3)が現れることが知られています.

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