■最短距離に関する問題(その5)

【3】アルハーゼンの問題

 ヘロンの問題に対して,「アルハーゼンの問題」とは寄り道するのが川ではなく池となったものです.すなわち

(Q)町F1から川の同じ側にある町F2に行くとき,円形の池岸の点Pに立ち寄るものとする.このとき道のりの長さが最小となるような点Pを求めよ

というものです.

(A)点Pが求められたとして点Pで円の接線を引き,点F2を接線に対して反対側に対称移動した点をF0とする.このとき,F1P+PF0が直線になればよいので,∠F1PF2が点Pを通る円の直径で2等分されるとき最短距離になる.したがって,F1,F2を焦点とし円の接する楕円と求めればよい.

 点Pが存在することは確かですが,では点Pはどうやって求めたらいいのでしょうか.純幾何学的に解くのは難しそうですから,点Pを解析幾何学的に求めようとすると4次方程式の解に帰着されるため,解はもし存在すれば4個あるいは2個,または解なしとなります.

 いずれにせよアルハーゼンの問題とヘロンの問題との違いはアルハーゼンの問題が(特殊な場合を除いて)定規とコンパスだけでは作図不可能な問題ということであって,F1,F2を焦点とし円の接する楕円を作図するという問題は作図問題としては解答不能なのです.

 なお,アルハーゼンの問題の拡張として「町F1から川の反対側にある町F2に行くとき,川岸Lの点Pに立ち寄り,一定幅dの「環状」の川を渡るものとする.このとき道のりの長さが最小となるような点Pを求めよ.」が考えられます.同じ側→反対側,池岸→「環状」の川岸に変わっています.

 また,円を他の円錐曲線に置き換えて一般化した問題ついては読者の演習問題としたいのですが,楕円ではF1P+F2P=一定であり片方の焦点から出た光線は楕円上で反射して第2の焦点に向かうとか,双曲線ではF1P−F2P=一定で片方の焦点から出た光線が表面にあたって反射するとあたかも第2の焦点から出たように反射するとか,放物線の焦点を出た光は曲線上で反射して曲線の対称軸に平行に進むという幾何光学的特徴はすでにご存知であろうと思います.

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