■最短距離に関する問題(その3)

【1】フェルマーの問題

 微分積分の入門書に「平面上に3つの定点A,B,Cがある.この平面上に点Pをとって,AP^2+BP^2+CP^2が最小になるようにせよ」という問題が偏導関数の応用例として載せられています.その点Pは重心です.

 3定点が4定点であっても同じ議論になるのですが,距離の2乗の和に特に具体的な意味があるようには思えません.むしろ,2乗を取り去ったほうが問題としては自然です(最小2乗法の問題はさておき).

 そこで「A,B,C3軒の家に電線をひきたい.電線の長さを最小にするにはどこの柱を立てればよいか」ではAP+BP+CPを最小にする実用価値のある問題になります.今回のコラムではコラム「書ききれなかった形の話(その2)」,「ビリヤード問題」から長さの和を最小にする問題を集めてみました.

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 ところで,この問題の三角形を凸四角形に変えると,不思議なことにとても簡単になってしまうのです.

(Q)凸四角形ABCDの内部に点Pをとり,AP+BP+CP+DPを最小とせよ.

(A)対角線の交点が求める点Pである.

 このことは図を描いてみれば明らかです.ちなみに数学が得意だったフランス皇帝ナポレオンが若い頃に発見したと伝えられている定理が,ナポレオンの定理「任意の三角形の各辺の外側に正三角形を作ったとき,それらの重心を結ぶと正三角形が得られる」です.三角形の各辺の内側に正三角形を作ったときも,それらの重心を結ぶと正三角形が得られます.これらの2つの正三角形の重心は一致し,その面積の差は最初の三角形の面積に等しくなります.

 ナポレオン点は,頂点と外正三角形の中心を結ぶ直線の共点として得られます.一方,第2ナポレオン点は頂点と内正三角形の中心を結ぶ直線の共点として得られます.フェルマー点・ナポレオン点・外心は同一直線上にあり,フェルマー点・第2ナポレオン点・フォイエルバッハの9点円の中心は同一直線上にあります.

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