■液晶の相転移(その2)

【2】らせん相

BCHの形状定数であるねじれ角は,幾何学的に求めようとすると結構骨の折れる作業になるが,固有方程式が2次方程式

3λ2+4λ+3=0

に帰着されることを利用すると簡単に得ることができる

λ=(-2±5i)/3=cosξ+i・sinξ → cosξ=-2/3, ξ=131.81°

ねじれ角はarccos(-2/3)=131.8°であり,これはπの無理数倍なので,非周期性・準結晶性を与えることがわかる.すなわち,正四面体の連結数を無限に増やしてもらせん軸に沿った投影図上で頂点が重なることはない.

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【3】プリズム相

Sommervilleの四面体は3辺の長さ[2,√3,√3]の合同な二等辺三角形4枚からなる等面四面体である.この四面体には自己複製的な空間充填性が備わっていて,積み上げると正三角柱を作ることができる.(つまり,この問題はA群無限鏡映群の問題である)

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【4】相転移 (非等長変換の不変式)

Sommerville三角柱の長さ2の対向する2辺が√3に短縮すると,正四面体が面と面を接合して正三角形面よりなるねじれた柱に変形する.円筒に内接するこの構造体はBoerdijk-Coxeter helixと呼ばれ,ねじれ角arccos(-2/3)=131.8°はこの非等長変換によってもたらされる.

その際,辺の長さとねじれ角の大きさの間には美しい変換式が成立する.このことから,BCらせん柱とSommerville三角柱は相遷移の兄弟分,カウンターパートの関係にあると考えられる.

逆に,サマーヴィルの正三角柱の長さ2の対辺が√6に伸長すると三角柱は折りたたまれて,平面に押しつぶされた体積が0の図形へと退化する

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