■液晶の相転移(その1)

正四面体を連結させたらせん状の配列は,建築家・磯崎新設計の水戸芸術館のシンボルタワーに用いられた.その塔の外壁のパネルをはずせば,Boerdijk-Coxeterらせんのスケルトンが現れる.BCH (Boerdijk-Coxeter helix)は,正四面体がらせん状に連なるねじれた図形で,緩やかにカーブする3本の稜線をもつ注連縄状の規則正しい構造体である.生物学者にはエイリアンのDNAに見えるに違いない.

Boerdijkはらせんの頂点に同じ大きさの球を配置した円筒内球充填の問題を考察している .この構造では局所的には最も効率よく最密充填構造を作ることができる.彼は局所最密充填を探して,BCらせん構造に行きついたのであるが,しめ縄に類似したその形状は,局所最密充填のみならず液晶や金属ガラス研究への応用など多様なバリエーションを示すことになった.予期せぬ出来事であったが,このらせんはimage display electronicsへの応用をもっていたのである.

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【1】液晶ディスプレイの原理

液晶ディスプレイでは液晶分子が垂直偏光板と水平偏光板の間に介在し,分子の方向がそろうと光は透過できず,個々の分子が一定のねじれ角で配向することによって光は透過できるようになる.液晶ディスプレイでは,液晶分子がプリズム相とらせん相の間を交代的に遷移し,第3の偏光板の役割を果たすことによって,光の透過性を制御しているというわけである.

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