■藤原松三郎(その4)

【5】藤原・掛谷の二角形(非定幅図形)

[Q]正三角形に内接しながら回転することができる円以外の図形は何か.

正3角形に内接しながら回転することできる凸閉曲線は円以外にも存在します.このような図形の一例がルーローの二角形ですが,藤原はもっと面積の小さい図形を発見しました.

内転形定理

[1]すべての内転形(凸多角形の各辺に接しながら,その中で1回転できる卵形線)の周長は等しい.

[2]正三角形の内転形で面積最小のものは,藤原・掛谷の二角形である.

正三角形の中線を一辺とする正三角形の頂点を中心として,中線の長さを半径とする2個の円弧からなる曲線(藤原・掛谷の2角形)です.ところで,デルトイドの接線の長さは一定で,接線はデルトイドの内転形になっている正三角形を太ったデルトイドとみなすと,太った線分に相当するものが藤原・掛谷の2角形です.この図形を応用すれば正3角形の穴をあけるドリルを作ることが可能になります.

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【6】歯車の歯形曲線

歯車は1点の周りの回転を他の点での回転に変換する機構である.昔の歯車の歯は滑り止めのための凹凸に過ぎなかったが,最近の機械では大きな力を高速で伝達することが要求される.

歯車の歯形曲線として重要なものを用途別に分類すると,インボリュート歯車とサイクロイド歯車の2種類になる.

[1]円の伸開線(インボリュート)

[2]円の輪転曲線(エピサイクロイド・ハイポサイクロイド)

前者は大きな力を高速に伝達することに適し,後者は滑り率が一定のため摩耗の最小化という点で優れている.

曲線Lのまわりに巻かれた糸があり,この糸をぴんと張ったままほどくと糸の自由端によって曲線Mが描かれるとします.MをLの伸開線(インボリュート),LをMの縮閉線(エボリュート)と呼びます.サイクロイドや対数らせんのインボリュートはもとの曲線と合同な曲線になることが示されます.

円の伸開線,すなわち円に巻きつけた糸の一端の軌跡は,歯車の歯形として工学に応用されています.スクロール方式のエアコンのコンプレッサーにも使われていて,振動や騒音が少ないという特長をもっている.

回転円が固定円に接して滑ることなく転がっていくとき,回転円の周上の点の軌跡を考えます.回転円が固定円に外接するとき,その軌跡をエピサイクロイド,内接するとき,ハイポサイクロイドと呼びます.

アステロイド: x^2/3 +y^2/3 =a^2/3 は固定円の半径が回転円の半径の4倍になっているハイポサイクロイドです.固定円と回転円の半径が等しいエピサイクロイドは心臓型曲線(カージオイド)を描きます.エピサイクロイド(カージオイド,ネフロイドなど),ハイポサイクロド(デルトイド,アステロイドなど)は,サイクロイドとは異なり代数曲線です.

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