■1000!/10^250は整数であるか? (その56)

1000!は10^250よりもはるかに大きい数ですが、どれくらい巨大な数であるのか、その桁数を求めてみましょう。

  logn!=log1+log2+・・・+logn

       =Σlogx

log(1000!)=5912.13

底を10に変換(常用対数)すると

  log10(1000!)=2567.61

1000!の桁数は2568であることがわかります。

===================================

 

【1】階乗の漸近評価(スターリングの公式)

ところで、階乗n!の近似値を与える公式として有名なスターリングの公式があります.

  n! 〜 √(2πn)n^ne^(-n)

スターリングの公式では,n=8のとき相対誤差は約1%ですが,nが大きくなるほど相対誤差は小さくなります.

 

 まず,スターリングの公式を誘導してみましょう.

y=logxのグラフを幅が1の長方形に分割していくと,xが十分大きければ相対的に和の間隔が小さくなるので,和は積分に置き換えられます.

  Σlogx≒∫(1,n)logtdt

 

 logxの原始関数は置換積分よりxlogx−x+Cと計算され,区間[1,n]ですから,

  ∫(1,n)logtdt=nlogn−n+1

となります.

1000log1000−1000+1=5908.76

===================================

  

  log(n−1)!<∫(1,n)logtdt<logn!

より,n!の下からの評価は

  ∫(1,n)logtdt<logn!

したがって,

  n!>exp(nlogn−n+1)=en^ne^(-n)=e(n/e)^n

が得られます.

 

 また,上からの評価は

  logn!<∫(1,n+1)logtdt

より,

  n!<exp((n+1)log(n+1)−n)=(n+1)^(n+1)/e^n

したがって,

  n!=n(n−1)!<nexp(nlogn−n+1)=en(n/e)^n

が得られます.

  e(n/e)^n<n!<en(n/e)^n

===================================

  

logn!=nlogn−n+o(n)

としても大体了解されますが,もっと正確に近似すると

  ∫(1,n)logtdt<logn!<∫(1,n+1)logtdt

より

  nlogn−n<logn!<(n+1)log(n+1)−n

 ここで,スターリングの公式

  n! 〜 √(2πn)(n/e)^n

で与えられるような漸近挙動を得るには,もっと注意深い解析が必要になることがわかります。

 したがって,両辺の相加平均に近い

  (n+1/2)logn−n

でlogn!を近似できることになり,

  ∫(1,n)logtdt

 =log1+log2+・・・+logn−1/2logn+δ

であること

また,ウォリスの公式:

  √π〜(n!)^2 2^(2n)/(2n)!√n

より,結局,スターリングの公式

  n!〜√(2πn)n^ne^(-n)

にたどりつきます.

(1000+1/2)log1000−1000+1/2・log(2π)=5912.13

 

===================================