■整数の表現(その23)

【3】ラマヌジャンのゼータ関数

 1916年,ラマヌジャンは,ラマヌジャン関数

  Δ(z)=qΠ(1−q^n)^24=Στ(n)q^n

  q=exp(2πiz)

に対するゼータ関数について考え,ある予想をたてました.

 ラマヌジャン数のゼータ,すなわち,

  L(s)=Στ(n)n^(-s)

とおくと,オイラー積のアナローグである

  L(s)=Π{1-τ(p)p^(-s)+p^(11-2s)}^(-1)

が成り立つことを予想したのです.

 歴史上最初のゼータであるオイラー積

  ζ(s)=Σn^(-s)=Π(1−p^(-s))^(-1)

は積の中身がp^(-s)の1次式であり,本質的には1次のゼータでしたが,L関数ではp^(-1)の1次式から2次式に進化しているのです.ラマヌジャン数のゼータは,歴史上最初の2次のゼータといえるのですが,新種のゼータに関するこの予想は,翌年,モーデルによって証明されました(1917年).

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係数τ(n)はnが増加するとき,急激に増加するため,およその大きさを決めるのは難しい問題のひとつであったが,

  |τ(p)|<2p^11/2

であることをラマヌジャンが予想し,1973年にドリーニュがそれを証明しました.この式はp^(-s)=xとおいた2次式

  1-τ(p)x+p^11x^2

の虚根条件(判別式:τ(p)^2-4p^11<0)となっていることに注意して下さい.ラマヌジャン予想はギリギリの予想であって,たとえばpの指数を11/2=5.5からちょっと小さくして5.499としたとすると,|τ(p)|<2p^5.499とはならない素数pが存在するのです.この業績により彼にはフィールズ賞が与えられている.ドリーニュは巨人グロタンディークの肩に乗って,解決に至ったのである.

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