■フーリエ級数(その2)

【2】フーリエ級数

フーリエ級数と呼ばれる関数展開は,フランスの数学者・物理学者フーリエが熱伝導に関する著作の中で,任意の周期関数y=f(x)がサインとコサインの項の和,すなわち,単振動(調和振動ともいう)の和に分解されることを証明したことに始まります.

f(x)が周期2πをもつ周期関数であるならば,

y=f(x)=a0+a1cosx+b1sinx+a2cos2x+b2sin2x+・・・  +akcoskx+bksinkx+・・・

と三角多項式の形に展開することができます.この式は,もとの関数f(x)が基本波成分a1cosx+b1sinxとその高調波成分とを合成したものとして表わせることを意味し,係数aj,bjはその成分の寄与率を示しています.寄与率は別の言い方をすれば各成分の含有率であり,重みといってもよいでしょう.

また,サイン波成分を適当な角度だけずらすとコサイン波になるのではサイン波成分とコサイン波成分との分離はあまり絶対的な意味をもちません.したがって,この式は,次式のようにも書き換えることができます.

y=c0+c1sin(x+d1)+c2sin(2x+d2)+・・・       +cksin(kx+dk)+・・・

さらに,曲線が奇関数であれば正弦項だけ,偶関数であれば余弦項だけの和となって,もっと簡単な式になります.

f(x)が滑らかであれば,比較的少ない項でこの級数を打ち切っても,それはf(x)をよく近似しますから,有限個の三角級数により関数近似することが可能です.

y=a0+a1cosx+b1sinx+a2cos2x+b2sin2x+・・・  +akcoskx+bksinkx

フーリエ級数ではあまり短い周期をもつ成分は無視しても構いません.なぜかというと短い周期をもつ成分を無視して元の図形を再現するとその周期に相当した微細な構造が失われるだけで,大して悪影響はないからです.また,周期関数f(x)の周期は2πですが,周期がTの関数はω=2π/T,x=ωtの変換によって新しい変数tを考えれば,tについての周期2πをもつ関数に変換されますから,上式の形で一般化して論ずることが可能になります.

以上のことより,フーリエ級数への展開はテイラー級数への展開よりもはるかに強力な方法になっています.フーリエはベキ級数の方法によって関数を取り扱うよりも,三角級数による任意の関数表現のほうが,これらのメリットを活かせると考えたに違いありません.

応用面でいうと,フーリエ変換の理論はそれがつくられた時点から物理現象を説明するための手段でしたし,現在でもさまざまな工学分野,CTスキャンなどの医療分野になくてはならない理論になっています.なぜフーリエ変換がCTスキャンなど医療用画像にとって重要なのかというと,前述の「短い周期をもつ成分(高調波成分)を無視してもとの図形を再現しても,その周期に対応した微細な構造が失われるだけで,再現された画像に大して悪影響はない」ということに起因しています.いい換えれば,巨視的なアウトラインは微視的なディテールには依存せず,大まかな性質だけで決まってしまうというものであり,その結果,微視的なディテールは見えなくなって,巨視的に意味のあるものだけが残るのだと考えられます.

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