■解析(その7)

【4】鉢型曲線の面積と弧長

次に,回転円(半径r)が固定円(半径R)に接して滑ることなく転がっていくとき,回転円の周上の点の軌跡を考えます.回転円が固定円に外接するとき,その軌跡をエピサイクロイド,内接するとき,ハイポサイクロイドと呼びます.古代ギリシャの人々は固定円上の回転円を使って惑星の軌道,とくに地球から見たときの惑星の逆行運動を説明しました.つまり,古代ギリシャ人は,惑星の動きを表現するために周転円(円の周りをまわる円)を考えていたのです.

歯車の穴に鉛筆を差し込んで回転させると花びら模様が描かれるおもちゃをスピログラフというのですが,この装置がハイポサイクロイドの応用であることはすぐに理解されます.固定円と回転円の半径比R/rが無理数なら曲線は決して閉じませんから,有理数倍になっているのであろうと思われます.エピサイクロイド(カージオイド,ネフロイドなど),ハイポサイクロド(デルトイド,アステロイドなど)は,サイクロイドとは異なり代数曲線です.

 

 ハイポサイクロイドで,R/r=4の場合がアステロイドです.

  x^2/3+y2/3=R^2/3

アステロイドはx,y軸上に端点のある長さRの線分により作られる包絡線であり,また,長半径と短半径の和がRである楕円

  x^2/a^2+y^2/(R−a)^2=1

の包絡線ともなっています.

 

 アステロイドが囲む周長は6Rですが,サイクロイドと同様,定数πに依存していません.また,面積は3πR^2/8で,固定円の面積の3/8(回転円の6倍)です.

 

 エピサイクロイドで,R/r=1の場合がカージオイドです.カージオイドは定円上に中心があり,カスプを通るような円の包絡線でもあります(周長16R,面積6πR^2).

 固定円の半径が1のとき,n尖点エピサイクロイドとn尖点ハイポサイクロイドの間の鉢形曲線は歯車の歯型曲線の設計に用いられます.その周長と面積は

  L={(8n+1)+(8n-1)}/n=16

  S={(n+1)(n+2)-(n-1)(n-2)}/n・π=6π

ともに,サイクロイド (L=8, S=3π)の2倍になっています.サイクロイドの性質はエピサイクロイド・ハイポサイクロイドにも遺伝するというわけですが,カージオイドは対応するハイポサイクロイドをもたないため(周長16R,面積6πR^2)になると考えられるのです.

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