■正多面体(その9)

【3】複合多面体の双対性

星形6角形では内側に正6角形ができますが,外側のとがった角を結んでも正6角形ができます.すなわち,星形6角形は外側を正6角形が取り囲んでいて,内側にも正6角形が入っていることがわかります.それでは,ここでクイズです.

 

(問)同じ大きさの正4面体2個を天地逆転させて,辺の中点同士が一致するように重ねた場合(それぞれの辺が直角に2等分されるように配置した場合),その外側と内側にはどのような立体ができるでしょうか?

この問題はダビデの星の3次元版です.頭の中でイメージできれば答は簡単なのですが,勘の働きにくい問題でもあります.上から見ても,前から見ても,横から見ても,同じ6角形に見える3次元図形を想像されたのではないでしょうか? 正解は,同じ大きさの正4面体2個による複合多面体で,ケプラーの8角星という名前がつけられていて,外側に立方体,内側に正8面体をもっています.

(答)正8面体を芯として,このとき,ケプラーの8角星の頂点は立方体の頂点をなすというのが正解です.

立方体と正8面体,正12面体と正20面体の複合多面体についても考えてみると,立方体と正8面体の場合は,外側を菱形12面体が,内側には立方8面体が入っています.正12面体と正20面体の場合では,外側を包む立体が菱形30面体,内側には20・12面体という多面体が内包されているのです.

正多面体とその双対多面体との共通部分は,正8面体,立方8面体,20・12面体です.したがって,菱形十二面体は立方体と正八面体,菱形三十面体は正十二面体と正二十面体を合成した立体ということができます.菱形十二面体の稜は立方体の対角線方向(4方向)を向いていて,対角線の長さの比が1:√2の菱形からなる12面体ですが,菱形三十面体の稜は正二十面体の6本の主対角線方向にあり,対角線の比が黄金比の菱形多面体になるというわけです.

 3種類の複合多面体−−正4面体と正4面体,立方体と正8面体,正12面体と正20面体−−について調べてみると,それぞれの立体の間に双対関係があり,3種類の複合多面体の外側にできる立体と内側にできる立体−−立方体と正8面体,菱形12面体と立方8面体,菱形30面体と20・12面体も互いに双対関係をもっていることがわかります.そして,これらもやはり複合多面体をつくることができ,そしてまたそこに現れてくる外側と内側の立体も双対関係になっています.自然界の法則性,自然が作るきれいな関係の1例といえましょう.

なお,高次元の純アルキメデス多胞体のなかには三位一体性(鼎対性,triality)を例外的に示すことがあることが知られています.

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