■位相幾何(その5)

オイラーの多面体定理

v−e+f=2

が物理的作用と結びつくと,興味のある幾何学的効果が出現してきます.たとえば,2次元的にランダムに配列した石鹸の泡はいろいろなサイズの泡細胞からなっていますが,表面張力の要請から境界長を極小化しようとしますから,接合角度は120°となります.このことから,石鹸の泡は各頂点の次数がすべて3である平面図形と考えることができます.1個の頂点に3個の辺が集まり,1本の辺の周りに2個の泡細胞が合するというわけです.

また,互いに120°の角度で交わる石鹸膜の交線は

  arccos(−1/3)=109.471°

で接触します.正四面体の頂点から中心に向かう3枚の膜は互いに120°の角度をなし,中心に集まる4本の線は109.471°(マラルディの角)をなします.すなわち,3次元では1個の頂点に4個の辺が集まり,1本の辺の周りに3個の泡細胞が会するというのが空間分割の局所条件です.

 このように,120°と109.471°は石鹸膜が接触するときの基本的な角度ですが,それにより

[1]2次元泡細胞の辺数の平均は≦6であり,すべての泡細胞が6辺以上の辺をもつことは不可能である

[2]3次元泡細胞の面数の平均は≦14であり,すべての泡細胞が14面以上の面をもつことは不可能である

したがって,2次元細胞の多くは6角形であり,3次元細胞の多くには14面体となります.

 ところで,コクセターは1つの泡に接する泡の数を

 (23+√313)/3=13.56

と計算し,そのアイデアを日記に記しています.これは2次方程式

  3x^2−46x+72=0

の解となっていることが見てとれますが,どのようにして導出されたものなのでしょうか? このことは,オイラーの多面体定理を使って証明されます.

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