■代数幾何(その2)

【2】ワイエルシュトラスの楕円曲線

 y=ax^3 +bx^2 +cx+dという方程式で定まる曲線はおなじみの3次曲線ですが,yのところがy^2 に変わるとワイエルシュトラスの楕円曲線:

  y^2 =ax^3 +bx^2 +cx+d

になります.ただし,a,b,c,dは有理数で,右辺の3次式は重根をもたないものと仮定します.楕円曲線をワイエルシュトラス形式に制限しても一般性を失いません.実際,どのような楕円曲線もワイエルシュトラス形式の楕円曲線に双有理的に同値だからです.x^2 の項の係数はx’=x+b/3aと変数変換することによって簡単に消すことができますから,

  y^2 =x^3 +ax+b   (4a3 +27b2 ≠0)

を楕円曲線と定義しても構いません.4a^3 +27b^2 ≠0は重根をもたないための条件です.

楕円曲線の例として,y^2 =x^3 +1をあげますが,この曲線のグラフはまったく楕円ではありません.楕円と楕円曲線はまったく異なるもので,楕円の孤の長さを求める楕円積分問題とかかわっていることから楕円曲線という名前がつけられています.

楕円曲線上に有理点が無限個のっていたり,有限個であったり,あるいは全くなかったりすることは図をいくらにらんでもわからない問題ですが,1970年代,フェルマーの問題を征するために必要となるのが楕円曲線であることが明らかになりました.楕円曲線には,楕円曲線と三点で交わる直線で,そのうちの二つの交点の座標がわかれば他の一点の座標も計算でき,二つの点の座標が有理数ならば,他の一点の座標も有理数であるなどの性質をもっています.

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