■完全ベキ乗数列(その55)

 素数の逆数の和

  Σ(1/p)=1/2+1/3+1/5+1/7+1/11+・・・→∞∞ですが,それでは

  Σ(1/p^2)=1/2^2+1/3^2+1/5^2+1/7^2+1/11^2+・・・

は有限でしょうか?

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 18世紀最大の数学者オイラーが1736年に発見した結果はエレガントなだけでなく意外なものでした.その無限級数とは

 1/1^2+1/2^2+1/3^2+1/4^2+・・・=π^2/6

です.この式の驚くべき点は自然数のみを含む級数の極限に円周率πが突然現れることです.実際,この足し算をいくら見つめても答えに円周率の現れそうな気配はまったくありません.

 1728年にベルヌーイはこの和が8/5に近いと述べ,その後,オイラーは何年もこの足し算にとりつかれ大変な努力の末にこの値を求めましたが,π^2/6であることをつきとめたとき,平方数の逆数和のかなたに円周率が浮かび上がる不思議にとても感動したようです.

 オイラーの無限級数和Σ1/n^sはsの関数とみるとき,ゼータ関数ζ(s)として知られており,ζ(2)=π^2/6と表されます.また,

 ζ(s)=1/1^s+1/2^s+1/3^s+1/4^s+・・・

=(1+1/2^s+1/4^s+1/8^s+・・・)(1+1/3^s+1/9^s+・・・)(1+1/5^s+・・・)・・・

1/(1−2^-s)・1/(1−3^-s)・1/(1−5^-s)・1/(1−7^-s)・・・

=Π(1−p^-s)^-1   (但し,pはすべての素数を動く.)

と書き換えることができます.

1+x+x^2+x^3+・・・=1/(1−x)

にx=1/p^sを代入したものを,Π(1−p^-s)^-1に代入して積を展開すると,ζ(s)=Σ1/n^sとなることがおわかりいただけるでしょうか.

 この式の右辺はオイラー積と呼ばれ,ゼータ関数と素数の間をつなぐ式になっています.したがって,ゼータ関数はすべての素数にわたる無限積であり,このような関係から,自然数全体についての和の話が素数全体についての積の話になります.数学は無限の科学といわれていますが,πの無限級数が無限にある素数と深く関係していたのです.

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