■長方形内の円配置を考える(その6)

 長方形内の円配置を考えるてきたが、円筒内の球配置を考えたコラムが「周期的四面体らせん構造」シリーズである。

その場合、スケルトンの基本形となったのがベルディエック・コクセラーらせんである。

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問題の設定

BCH (Boerdijk-Coxeter helix)は、正四面体がらせん状に連なるねじれた図形である。Boerdijkはこのらせんの頂点に同じ大きさの球を配置した円筒内球充填の問題を考察している[1] 。この構造では局所的には最も効率よく最密充填構造を作ることができるが、大域的な空間充填密度は50.7%と意外に低値である(図1)。また、BCHのねじれ角はarccos(-2/3)=131.8°であり、これはπの無理数倍なので、非周期性・準結晶性を与える。すなわち、正四面体の連結数を無限に増やしてもらせん軸に沿った投影図上で頂点が重なることはない。しかし、正四面体を少し変形させると周期性(例: 135°)・非周期性(例: 黄金角)をもつらせん構造を作ることができる[2]。これらのらせん構造には半径の異なる2種類の球を配置することができるが、その充填密度はいかほどであろうか?

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非周期的らせんと周期的らせん

多くの植物の葉は幹の周りにらせんを描くようについている。これは植物の葉が真上に重なり合うように成長すると他の葉が必要とする日光、水分、酸素を遮ってしまうからという明白な数学的条件にしたがっている。黄金角は2π/φ2〜137.5°(πの無理数倍)なので、らせんを無限に描いたとしても上下の葉がピッタリ重なることはない。しかし、らせんのねじれ角を2παとすると、大多数の植物においてαは有理数であり(周期的らせん構造)、それはFibonacci数をひとつおきにとった比1/3,2/5,3/8,5/13,8/21,・・・で表されることになる(Schimper-Braunの葉序則)。この分数列は二つ先のFibonacci数との比であるから1/φ2に収束することになるが、もはや植物においては周期的・非周期的を区別する本質的意味はないと考えられる。そこで、・・・

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周期的・非周期的四面体らせん構造体の構築

(a) 正四面体の1辺を伸縮(正三角形面2枚と二等辺三角形面2枚からなる四面体)

(b)正四面体の1組の対辺を伸縮(二等辺三角形面4枚からなる等面四面体)

(c)正四面体の連続する3辺を伸縮(2種類の二等辺三角形面からなる四面体)

正四面体を変形させた3種類の四面体(a),(b),(c)を用いて、ねじれ角が一定のらせんを実現させる(図2,3)。そして、これらの変形四面体らせん構造を骨格として、大きさの等しい1種類の球あるいは大きさの異なる2種類の球を配置し、その空間充填密度を計算する。

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高次元らせん構造体の応用

染色体は複雑な多重らせん構造(super-coil)を作っている。そのような対象の場合、高次元のBCHを応用してその構造を構築することが期待できる。[3]に基づいて、円筒内において超球が占める比率を計算すると、4次元であれば23.7%であるが、5次元では8.96%に下落し、7次元以上では1%未満になる。不思議なことに超球の体積は∞次元のとき0に収束する(高次元のparadox)。高次元空間であってもこのような計算は可能であるが、その姿を想像し、理解するのは難しい。

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