■コペルニクスの逆定理(その13)

 ドリルの問題ではローターの自転と公転が反対回り,ロータリーエンジンでは同じ向きという違いがありますが,その他に固定円と回転円の関係が逆になることも異なります.

 ドリルやロータリーエンジンの設計は正n−1角形を原点を中心とする円周上を公転させながら自らも自転することにより得られる曲線(ペリトロコイド曲線)を決定する問題となるのです

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【Q1】円周mの大円がある.この円に内接しながら円周1の小円が転がるとき,1周するまでに小円は何回転するか? また,外接しながら転がるときは何回転するか?

(A1)論より証拠,同じ大きさのコインを2つ用意して,一方を固定し他方をそれに外接するようにして実際に転がしてみると,円周は等しいのに2回転することがわかる.大円が小円のm倍のときは内転,外転に応じてそれぞれm−1回転,m+1回転することになる.もちろん円周の内側と外側で長さが違うわけではない.パップス・ギュルダンの定理をもちだすまでもなく,この問題のポイントは,小円が自転しながら同時に1公転していることにある.なお,大円は任意の閉曲線としても構わない.

 n尖点ハイポサイクロイドは

  x=(n−1)cosθ+cos(n−1)θ

  y=(n−1)sinθ−sin(n−1)θ

一方,n尖点エピサイクロイドは

  x=(n+1)cosθ−cos(n+1)θ

  y=(n+1)sinθ−sin(n+1)θ

と表されるのもそのせいである. 常識的には,内側であろうが外側であろうがm回転すると考えるのがアタリマエであるから,このように説明されても何となくだまされているような気分になるのが「自転・公転問題」である.

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 円周mの大円に内接しながら円周1の小円が転がるとき,

  α:小円の中心の大円の中心に対する公転角

  β:小円の自転角

として,弧の長さを等しいとおけば

  mα=α+β → m−1=β/α

すなわち,m−1回転するのである.

 このとき,回転子とつねに相対的位置が不変に保たれた点P(x,y)の運動について調べてみよう.固定子の中心を原点(0,0),回転子の中心を(x0,y0)として,最初の中心を(a,0)にとる.回転子に固定された点P(x,y)と回転子の中心との距離をRとして,点Pの最初の相対的位置を

  x−x0=Rcosγ,y−y0=Rsinγ

にとる.

 回転子が原点を中心とする円周上を公転角α(反時計回り)で動き,また,回転子が中心の周りを自転角β(時計回り)で回転するとき

  x0=acosα,y0=asinα

  [x]=[cos(−β),−sin(−β)]Rcosγ+x0

  [y]=[sin(−β), cos(−β)]Rsinγ+y0

  x=Rcos(−β+γ)+acosα

  y=Rsin(−β+γ)+asinα

ドリルの問題では,ローターの(n−1)公転で1回転(自転)するから,

  β/α=1/(n−1)

また,

  固定子(内歯車,歯数r)

  回転子(外歯車,歯数s)

とおくと,大円の円周は小円のr/s(=m)倍と考えることができるから,

  m−1=r/s−1=(r−s)/s=1/(n−1)

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 なお,円周mの大円に外接しながら円周1の小円が転がるときは,

  mα=β−α → m+1=β/α

よりm+1回転するが,内接のときと外接のときとでは小円の回転する方向が逆になる.

 回転子が原点を中心とする円周上を公転角α(反時計回り)で動き,また,回転子が中心の周りを自転角β(反時計回り)で回転するとき

  x=Rcos(β+γ)+acosα

  y=Rsin(β+γ)+asinα

  β/α=1/(n−1)

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