■ダリとエッシャー(その5)

 ダリのパラダイムシフトが如実に現れている作品が「記憶の固執(1931年)」と「記憶の固執の崩壊(1954年)」の対比である。

 前者は時間と空間の流動性を示唆しているのに対し、後者では前者に描かれていたものがブロック化され、物質とエネルギーは離散的な量子に分解されるというハイゼンベルグの量子物理学的な視点が採用されている。

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 原子はそれよりも小さい粒子でできていることが明らかになった。トムソンは負に帯電した電子がプディングの中に入っているプラムのように散らばっている「プラムプディングモデル」を唱えた。

「プラムプディングモデル」は1913年にラザフォードが原子核を発見するとすぐに淘汰された。しかし、原子核が正の電荷をもつ陽子からできているとすると原子の重さの見合うだけの質量はなく、陽子とほとんど同じ質量をもつ電気的に中性な粒子の存在が予言された。この中性子の分離には1930年代まで時間を要した。

ボーアは原子が電磁波を出してエネルギーを授受する仕組みとして、電子のエネルギーと軌道を関係づける軌道周波数説・量子飛躍説を唱えた。

ド・ブロイは波動と粒子の二元性、パウリは排他原理発見した。電子は粒子であるとともに波動であり、電子の位置を観測するだけではその運動量(速度と方向)を知ることができないことが分かった。このような不確定性原理のため、量子物理学が分かりにくいされる一因ともなっている。

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