■ダリとエッシャー(その1)

 20世紀に数学や科学から導かれた概念を作品の中心に据えて描いた芸術家の双璧といえばスペインのダリとオランダのエッシャーであろう。

 私の周りにいる数学者は口々に「高次元図形は美しくない」という。一方、ハンガリーの詩人タムコー・シラトーは「これまでまったく芸術のなかった4次元の芸術的征服が起こるだろう」という。

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 立方体を展開すると正方形が6つできるように,正8胞体を展開すると立方体が8つできる.

 画家サルバトール・ダリが1954年に描きあげた「磔刑(超立方体的人体)」では,古典的なキリストの磔刑図と展開した正8胞体を組み合わせることで,3次元世界と4次元世界を同時に描こうとしている.

 ダリは19世紀の科学者が高次元の存在という観点から降霊術を合理的に説明しようとしたのと同様、宗教と物理的世界を結びつけるために4次元を使ったのである。

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