■ポリトープを巡る人々(その2)

 私たちになじみのない4番目の次元を見るにはどうしたらよいだろうか?

 ビクトリア朝の人々は空間の4つめの次元という発想に魅了されていたという。この世界と並行して存在する4番目の次元に死後の世界があり、現実の物質世界と自由に行き来できるのではないかと考えたからである。

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 イギリスの数学者チャールズ・ハワード・ヒントンはこの問題に大いに興味を掻き立てられ、「4次元とは何か」という論文を発表した。そのなかで彼は3次元世界は実在する4次元世界の断面であるという発想を展開している。

 また、彼の同僚の友人が「フラットランド−たくさんの次元の物語−」を出版(1884年)したエドウィン・アボットである。二人の間にどれくらいの交流があったかはわからないが、共通の友人を通じて直接的な接触があった可能性は高いと考えられる。

 メアリー・エレン・ブールと結婚し、アリシア・ブール・ストットの義兄となった後、日本に赴いて数年間数学教師を務めた。その後、アメリカのプリンストン大学の数学教師になった。ヒントンはまったく型破りな人で,プリンストン大学時代に野球のピッチングマシンを設計したというエピソードがある。

 ところで、3次元正多面体は5種類あるが,4次元正多面体(ポリコロン)が6種類あることを発見したのはシュレーフリである.・・・正5胞体(4次元の正四面体に相当),正8胞体(テッセラクト,4次元の立方体に相当),正16胞体(4次元の正八面体に相当),正120胞体(4次元の正12面体に相当),正600胞体(4次元の正20面体に相当),正24胞体(3次元対応物はない).そして5次元以上になると,正多胞体数はどの次元でも3種類しかなくなることもシュレーフリが発見した.

 4次元の立方体である正8胞体(頂点数16,辺数32,2次元面数24,3次元面数8)を2次元あるいは3次元のなかで表そうと試みることは可能であるが、4次元立方体を見た眼で把握するには相当な苦労がいる。

 ヒントンはその会得法を考えだした。彼がテッセラクトと呼んだ正8胞体(頂点数16,辺数32,2次元面数24,3次元面数8)を「みる」ための訓練道具には16色に塗り分けた81個の立方体,平板27枚,多色で面と辺を塗り分けたカタログ立方体12個で構成されていた.(実際に彼が4Dを見る方法を身につけたかどうかは誰も知らない…)

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