■モーデル・ファルティングスの定理(その1)

『x^n+y^n=z^nは、n≧3のとき、x,y,zは正の整数解をもたない。』

 フェルマーの問題は、n=1のときにはx+y=zという単なる足し算ですから、xとyにどんな自然数を入れても自然数zは必ず存在します。

 n=2の場合はピタゴラス方程式と呼ばれ、無数の解をもち、しかもすべての解をもれなく求めることのできる公式も知られています。

 n=4の場合は、フェルマー自身が無限降下法という一種の背理法を用いて0と1の中間に整数が存在するという矛盾を導き出すことによって証明が与えられました。

 指数が3以上のフェルマー方程式については、n=3の場合はオイラー(1770年)、n=5の場合はディリクレとルジャンドル(1825年)、n=7の場合はラメ(1839年)によって証明が与えられ、それ以上のnについては素数の場合だけを調べればよいのですが、初等的な方法では手続きが急速に複雑になって行き詰まりこれ以上進むことに限界がありました。

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 整数解を要求する2変数1次方程式ax+by=c,2変数2次方程式ax^2+by^2=c(a,b,cは整数)などは、ギリシャのディオファントスにちなんでディオファントスの不定方程式と呼ばれます。

 たとえば、y^2=x^3−2の整数解について、ディオファントスは、y=t+1,x=t−1とおき、y^2=x3−2に代入するとt2+2t+1=t^3−3t2+3t−3。

 この式はt(t^2+1)=4(t^2+1)と変形できるので、t=4すなわちy=5,x=3が解であるとしています。しかし、端的にいって、このような解き方にはアート(技巧)はあってもセオリー(一般的理論)がなく、勘や経験や個々の問題の性質に負っていて、決定打ではありません。

 問題はこの型の不定方程式に対するすべての整数解、あるいは有理数解を求めることですが、ステップアップしながら考えてみることにしましょう。

a)整数係数のax+by=cは無数の有理数解をもちます。

b)二次曲線ax^2+by^2=cのグラフは円錐曲線ですが、この方程式が有理数解を1つもてば、実は無数のもつことを示すことができます。たとえば、方程式x^2+y^2=1には、無限に多くの有理数解、(3/5,4/5),(5/13,5/12),(12/37,35/37)など・・・が存在します。

 ところが、半径が√3の円、x^2+y^2=3になると有理点は全くなってしまいます。2次曲線は有理点を無限のもつか、1つももたないかのどちらかです。

c)「三次曲線ax^3+by^3=cや楕円曲線y^2=ax^3+bx^2+cx+dなど、3次以上の不定方程式には一般に整数解が有限個しかない。」

 これを証明したのはジーゲルで、その定理はジーゲルの有限性定理(1929年)と呼ばれています。

 この定理により、すべての2変数多項式の可解性が決定したわけではありませんが、少なくとも2変数2次多項式の可解性条件はわかったことになります。

d)また、モーデル・ファルティングスの定理(1983)とは、「種数が2以上の代数曲線は有理点を有限個しかもたない。」というものです。

 2次曲線のように有理点全体を1つの変数でパラメータ表示できる曲線を種数が0の曲線と呼んでいます。一方、種数が1である曲線に楕円曲線があります。

 したがって、有理点が無数にあるような曲線は種数が0か1ということになり、直線(種数0)か、円錐曲線(種数0)か、楕円曲線(種数1)に限られてきます。

 また、リーマン・フルヴィッツの公式よりフェルマー曲線は種数が(n−1)(n−2)/2で、これはn=3のとき1ですが、n≧4のときは2以上となりますから、そこでフェルマーの予想を征するために必要となるのが楕円曲線であったというわけです。

 円錐曲線の有理点は無限ですが、楕円曲線の有理点は有限です。実際問題として、有限とはいってもものすごい大きさこともあるわけですが、無限よりは範囲が狭められたことは確かです。

 すなわち、フェルマーの方程式に解があるとすればそれぞれのnに対して解は高々有限です。モーデル・ファルティングスの定理によって有限個しか解がないことはわかりましが、1つもないかどうかはわかりません。フェルマーの予想が証明されたというのではありませんが、それでも大変な前進であることは明らかです。

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