■格子のボロノイ細胞(その53)

(2)塩化セシウムの結晶

 イオン結晶には,NaCl型構造以外に,塩化セシウム型(CsCl型)やせん亜鉛鉱型(ZnS型)などがある.CsClでは立方体の頂点にCs+イオンがあり,立方体の中心にCl-イオンがある単純立方格子をつくっている.体心立方格子のカドと中心に異種の原子を置くことによって得られると考えてもよいが,いずれにせよ,この立方体中には1分子のCsClが存在することになる.CsClのマーデルング定数は,

  α=1.762675

となることがわかっている.一方,ZnSのマーデルング定数は,

  α=1.63806

である.

 CsCl型構造では,1個のCsイオンに最も接近しているのは8個のClイオンである.この最近接距離をrとすると,第2近接は(2/√3)rの距離にある6個のCsイオン,第3近接は(2√2/√3)rの距離にある12個のCsイオン,第4近接は(√11/√3)rの距離にある24個のClイオン,さらに8個のCsイオンが2rの距離(第5近接)に存在する.

 したがって,CsClのマーデルング級数は,

  8−6/(2/√3)−12/(2√2/√3)+24/(√11/√3)−8/4−・・・

になる.NaClとCsClではイオンの並び方が異なっている.

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 SPLAGのBCCのデータを用いて,塩化セシウムのマーデルング定数をだい51近接まで計算してみたのであるが,

  8/√3−6/2−12/2√2+24/√11−8/4−・・・+24/√148

=/25.5552

 マーデルング定数の定義が間違っていると思われる.

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