■フェルマーの小定理とウィルソンの定理(その6)

 pを素数,kをp−1で割り切れない正の整数とするとき,

  1^k+2^k+3^k+・・・+(p−1)^k

がpで割り切れることを証明してみよう.

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【1】簡単な例

 まず,簡単な例を示す.

  1^k+2^k+3^k+4^k  (mod 5)

に対して,1^k,2^k,3^k,4^k (mod 5)を個々に手計算し,そのあとで加算してみよう.

k  1^k  2^k  3^k  4^k  1^k+2^k+3^k+4^k

0  1   1   1   1   4

1  1   2   3   4   0

2  1   4   4   1   0

3  1   3   2   4   0

4  1   1   1   1   4

5  1   2   3   4   0

6  1   4   4   1   0

7  1   3   2   4   0

8  1   1   1   1   4

 このように1^k,2^k,3^k,4^k (mod 5)はすべて周期4をもっていることがわかる.たとえば,3^k+4=3^k・81=3^k (mod 5)である.このことは1^k+2^k+3^k+4^k  (mod 5)も周期4をもっていることを意味する.kが4で割り切れないとき,そのときに限り

  1^k+2^k+3^k+4^k=0  (mod 5)

そうでないとき,

  1^k+2^k+3^k+4^k=−1  (mod 5)</P>

となることが予想される.

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【2】mod算術</P>

 mod算術を扱う場合,1/2のような数はある整数と同値である.たとえば,

  1/2=6/2=3  (mod 5)

  1+1/2+1/3+1/4=1+13+17+19=0  (mod 25)

 また,

  1+1/2+1/3+1/4=1+3+2+4=0  (mod 5)

であるが,

  4=−1,3=−2  (mod 5)

を使えば,

  1+1/2+1/3+1/4=1−2+2−1=0  (mod 5)

同様に,

  p−1=−1,p−2=−2,・・・  (mod p)

であるから

  1+1/2+1/3+・・・+1/(p−1)=0  (mod p)

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【3】証明

[Q]kがp−1の倍数でない場合,

  1^k+2^k+3^k+・・・+(p−1)^k=0  (mod p)

kがp−1の倍数の場合,

  1^k+2^k+3^k+・・・+(p−1)^k=−1  (mod p)

を証明せよ.

[A]kがp−1の倍数であるとき,a^k=1  (mod p)

  1^k+2^k+3^k+・・・+(p−1)^k=1+1+1+・・・+1=p−1=−1  (mod p)は明らかである.

 そこで,kをp−1で割り切れないものとする.1,2,・・・,p−1は順序を無視すれば,法pに関する原始根をgとすると法pに関してg,2g,・・・,(p−1)gと合同である.

  1^k+2^k+3^k+・・・+(p−1)^k=g^k(1^k+2^k+3^k+・・・+(p−1)^k)  (mod p)

それゆえ

  1^k+2^k+3^k+・・・+(p−1)^k=0  (mod p)

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