■分割数の性質(その25)

【3】重さ0の保型形式とムーンシャイン予想

 SL(2,Z)群上,最も単純な(基本的・古典的)保型形式は重さkのアイゼンシュタイン級数

  Ek=1/2Σ1/(mz+n)^k

    m,nは互いに素,kは整数4,6,8,・・・(4以上の偶数)

です.すなわち,アイゼンシュタイン級数は変換公式

  Ek(az+b/cz+d)=(cz+d)^kEk(z)

    c,dは互いに素

を満たすというわけです.

 保型性の定義から

  Ek(z+1)=Ek(z)

  Ek(-1/z)=z^kEk(z)

はすぐわかりますが,前者は周期性,後者は双対性と理解することができます.

  Ek(z+1)=Ek(z)    (周期性)

  Ek(-1/z)=z^kEk(z)  (双対性)

 この保型性の定義は周期性f(x+1)=f(x)を含むので,任意の保型形式はq=exp(2πiz)とするフーリエ展開のもち,

  E4(z)=1+240Σσ3(n)q^n

  E6(z)=1−504Σσ5(n)q^n

  E8(z)=1+480Σσ7(n)q^n

  ・・・・・・・・・・・・・・・・

     σk(n)はnの正の約数のk乗和

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 ベルヌーイ数を用いると

  Ek(z)=1−2k/BkΣσk-1(n)q^n

また,ζ(1-k)=−Bk/kにより

  Ek(z)=1−2/ζ(1-k)Σσk-1(n)q^n

とも表されます.これらはすべてのσk(n)を教えてくれる母関数であり,それが保型性を示しているという事実が,モジュラー関数は深淵といわれる所以です.

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 アイゼンシュタイン級数を用いると

  Δ(z)=η(z)^24=qΠ(1-q^n)^24

     =q-24q^2+252q^3-1472q^4+5483q^5+・・・

  Δ(z)=1/1732(E4(z)^3-E6(z)^2)

と表されます.

 19世紀の後半,デデキントとクラインは独立に重さ0の保型関数

  j(az+b/cz+d)=j(z)

を構成しました.j(z)は最も簡単でよく知られているSL(2,Z)不変な保型関数で,q=exp(2πiz)とおくと,

  j(z)=E4(z)^3/Δ(z)

    =1/q+744+196884q+21493760q^2+864299970q^3+・・・

と展開されます.

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