■g(k)とG(k)  (その10)

【1】ラグランジュの定理

 任意の整数nは,n個平方和

  n=1^2+1^2+・・・+1^2

に書けますから,これをなるべく少ない数の平方和でnを表そうと思うのは自然な発想です.そこでまず,簡単な数値実験から始めることにしましょう.1から10までの整数をいくつかの平方数の和の形式で表現するというものです.

 整数の平方

  0,1,4,9,16,25,・・・

は非常にまばらにしか存在しませんが,2つの平方数の和の形で表される整数はより頻繁に現れます.1,2,4,5,8,9,10,・・・

  1=1^2+0^2

  2=1^2+1^2

  4=2^2+0^2

  5=2^2+1^2

  8=2^2+2^2

  9=3^2+0^2

 10=3^2+1^2

 ここで,3,6,7といった整数は,2つの平方の和では書けないことがわかります.しかし,3つの平方和となると幾分間隙を埋めてくれます.

  3=1^2+1^2+1^2

  6=2^2+1^2+1^2

 それでも,なおすべての正の整数を得ることはできません.最後まで残った7に対しては3つの平方数の和で書けず,4つの平方数が必要となります.

  7=2^2+1^2+1^2+1^2

 このような数値実験からいくつかのことが予想され,肯定的に証明されています.

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[1]フェルマー・オイラーの定理(2平方和定理)

 特別な素数である2を除外して,素数は4で割ると余りが1になるもの(5,13,17,29,37,41,・・・)と3になるもの(3,7,11,19,23,31,・・・)の2種類に分けられます.

 このうち,4n+1の形の素数は2つの整数の平方の和として表されます.たとえば,5=1^2+2^2,13=2^2+3^2,17=1^2+4^2,29=2^2+5^2

 しかし,4n+3の形の素数は1つもこのようには表せないのです.この定理はフェルマーの定理と呼ばれ,フェルマーは無限降下法でこれを証明しましたが,その証明は不十分で,100年後のオイラーによって完全な証明がなされています.

 それでは,どのような自然数mが2つの平方数の和の形に書くことができるのでしょうか? 2つの平方数の和になる数m=4n+3はありません.mの素因数分解におけるp=4n+3の形のすべての素因数の指数が偶数であるときに限り,2つの平方数の和の形に表すことができるのです.

(補)自然数nが2つの平方数の和であるための必要十分条件は

  「nを素因数分解したとき,4k+3の形の素数が偶数乗で現れる」

ことである.

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[2]ガウス・ルジャンドルの定理(3平方和定理)

 4n+3の形の数は2個の平方数の和で表せませんが,同様にして,

  「8n+7の形の数は3個の平方数の和では表されない.」

 逆にいうと,n≠4^k(8n+7)はnが高々3個の平方数で表されるための必要十分条件です.ガウスの定理ともルジャンドルの定理とも呼ばれますが,ルジャンドルは2次形式ax^2+by^2+cz^2の研究を通して,より一般的な3元2次形式論として,この結果を得ています.

(補)自然数nが3つの平方数の和であるための必要十分条件は

  「nが4^n(8k+7)の形でない」ことである.

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[3]ラグランジュの定理(4平方和定理)

 前述の数値実験から「すべての正の整数は,g個の平方数の和として表すことができるだろうか? さらに,gの最小値はいくつであろうか?」というより高度な問題が派生しますが,「すべての正の整数は高々4個の整数の平方和で表される」というのが,ラグランジュの定理です.

 驚くべきことに,7のみならず,任意の自然数がたった4つの平方数の和の形に表せるのです.

  7=2^2+1^2+1^2+1^2

  2=1^2+1^2+0^2+0^2

 このことを,シンボリックに書くと

  n=□+□+□+□

となります.□は平方数の意味です.

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