■フルビッツのゼータ関数(その7)

【2】ラマヌジャン予想(2次のゼータの始まり)

 1916年,ラマヌジャンはラマヌジャン数のゼータについて考え,ある予想をたてました.ラマヌジャン数のゼータ,すなわち,

  L(s)=Στ(n)n^(-s)

とおくと

  L(s)=Π{1-τ(p)p^(-s)+p^(11-2s)}^(-1)

が成り立つことを予想したのです.

 それまでは,

  ζ(s)=Σn^(-s)=Π(1−p^(-s))^(-1)

のように,積の中身がp^(-s)の1次式であり,本質的には1次のゼータでしたが,オイラー積と比較してみるとわかるように,p^(-1)の1次式から2次式に進化しており,歴史上最初の2次のゼータといえるのです.

 新種のゼータに関するこの予想は,翌年,モーデルによって証明されました(1917年).

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 また,ラマヌジャンは同時期に重さ2の保型形式,すなわち,

  F(az+b/cz+d)=(cz+d)^2F(z)

という変換公式をもつ

  F(z)=qΠ(1-q^n)^2(1-q^11n)^2=q-2q^2-q^3+2q^4+q^5+2q^6-2q^7+・・・

    =Σc(n)q^n

の場合のゼータ

  L(s)=Σc(n)n^(-s)

についても,2次のゼータとなる

  L(s)=(1-c(11)11^(-s))Π(1-c(p)p^(-s)+p^(1-2s))^(-1)

を予想しています.

 この予想は,1954年,アイヒラーが楕円曲線:y^2−y=x^3−x^2のゼータ関数と保型形式:F(z)=qΠ(1-q^n)^2(1-q^11n)^2のゼータ関数が,すべての素数に対して一致することを示すことによって解決されました.

 アイヒラーが示した「解析的ゼータ=代数的ゼータ」は,ゼータの統一の先駆けであったのですが,ワイルズのフェルマー予想の証明(1995)に至る大きなステップであって,ラマヌジャン予想は20世紀の数論の原動力として重要な役割を果たしたといえるのです.

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