■因数分解の算法(その25)

【1】複素数と行列

 平面の回転行列は

  [cosθ,−sinθ]

  [sinθ, cosθ]

の形に書けました.

 ある複素数に虚数単位iをかけると

  zi=(x+yi)i=−y+xi

となり,この操作は90°回転に対応することがわかります.そこで,回転行列にθ=π/2を代入すると

  J=[0,−1]

    [1, 0]

となります.

 複素数平面でiが果たす役割と行列Jが果たす役割は等しいのですが,実際にこの行列を2乗すると

  J^2=[1,0]=−E

     [0,1]

となって,虚数のもっている性質を備えていることがわかります.

 このことを踏まえると,複素数に対応した行列を導入することができます.

  Z=xE+yJ=[x,−y]

          [y, x]

 ここで,

  E=[1,0]   J=[0,−1]

    [0,1]     [1, 0]

  Z’=xE−yJ=[ x,y]

           [−y,x]

  Z・Z’=[x^2+y^2,0]=(x^2+y^2)E

       [0,x^2+y^2]

ですから,(x^2+y^2)Eという行列が(虚数単位iを陽に用いることなしに)行列Zと行列Z’の積に分解できたことになります.

 また,オイラーの公式

  exp(iθ)=cosθ+isinθ

を行列で表現すると

  exp(Jθ)=(cosθ)E+(sinθ)J

         =[cosθ,−sinθ]

          [sinθ, cosθ]

となって,確かに回転行列になっていることがわかります.

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