■素数の逆数和(その11)

 素数定理は,ガウス以降,多くの数学者たちが証明できなかった難問でしたが,ガウスの予想から約100年後の1896年,フランスの数学者アダマールとプーサンは,同じ年に独立に,リーマンによって複素数まで拡張されたゼータ関数を用いてガウスの素数定理を証明しました.

 その後,長い間,素数定理の証明には複素解析的な方法を使用することが避けられないと信じられていましたが,1949年,フィールズメダリストのセルバーグとさすらいの数論家エルデスは独立に複素解析関数の理論を使わない初等的な方法で素数定理を証明し,当時の数学界を大いに驚嘆させました.セルバーグはこの功績によりフィールズ賞(4年に一度開かれる世界数学者会議で数学の著しい研究に対して与えられる賞で,数学界のノーベル賞ともいうべきものである)を受賞していますが,エレガントで独創的な解をもつ問題を探し当てることができる数学者が優れた数学者ということなのでしょう.

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 素数定理をエラトステネスのふるいという初等的な方法を用いて,ラフなスケッチ程度に誘導してみましょう.xまでのすべての整数うちで,奇数,すなわち2で割れない数は大体半分(1−1/2)あります.奇数のうちで,3で割り切れない数は2/3=1−1/3あります.さらに,残っている数のうち,5で割り切れない数は1−1/5あります.したがって,xを越えない素数の個数はこれらの積をすべての素数pにわたってとればよいことになり,近似的に

  Π(1−1/p)・x

に等しくなります.さらに,Π(1−1/p)は近似的に1/logxに等しくなります.ただし,これを証明するのは微積分を使っても容易ではありません.専門的で,ここで説明することはできそうにありませんから,天下り式に結果だけを示しておきます.このことを認めれば,素数定理π(x)〜x/logxが導出されたことになります.

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