■シュニーレルマンの定理(その10)

 シュニーレルマンがシュニーレルマン密度を導入した動機はゴールドバッハ予想を解決するためであった.d(2P)>0から

[1]シュニーレルマンの定理

 定数cを十分大きくとれば,4以上の自然数は高々c個の素数の和として表すことができる.

 その後,陳景潤は次の結果に到達した.

[2]陳の定理

 素因数を高々k個しかもたない自然数をpkと表すとき,十分大きなすべての偶数は

  2N=p+p2

と表すことができる.(p2:概素数)

 ヴィノグラードフは

[3]ヴィノグラードフの定理(3素数定理)

 十分大きなすべての奇数は3つの奇素数の和で表される

を証明している.

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【双子素数】

 その差が2であるような素数のペア(p,p+2)を双子素数と呼びます.小さな双子素数には(3,5),(5,7),(11,13),(17,19),・・・など,ちょっと大きなものでは(22271,22273),・・・などがあります.

 双子素数が無限に多く存在するかどうかは今のところわかっていません.双子素数の場合に難しいのは素数全体のときと異なって,双子素数の逆数の和

1/3+1/5+1/5+1/7+1/11+1/13+1/17+1/19+・・・+1/p+1/(p+2)+・・・

が無限大とはならずに,その和が1.90195・・・(ブルンの定数:1919年)となることが証明されている点です.このことは,双子素数が無限にあるとしても,まれにしか存在しないことを示しています.そのため,双子素数が無限に存在することの有力な証拠は見つかっているにもかかわらず,完全な証明には至っていないのです.

 双子素数の分布に関しては,ハーディとリトルウッドによって,

  πtwin(x)〜Cx/(logx)^2

ただし,pを3以上の素数として

  C=2Π(1−1/(p−1)^2)=1.3203・・・

と予想されています.ここで,Cはオイラー積のアナログであり,双子素数の場合のゼータ関数とみなすことができます.定まった用語ではないのですが,ハーディ・リトルウッド積と呼んでいいでしょう.この法則は経験的には正しそうであり,双子素数はたぶん無限組あると信じられています.

 現在のところ,双子素数予想にもっとも接近した結果は,1966年,陳景潤によるもので,陳景潤は素数と概素数(素因数を2つしかもたない合成数)のペアは無限に存在することを証明しました.これは無限に多くの双子素数が存在することに大変接近した結果であって,双子素数予想の証明に向かって最初の大きな一歩と考えられます.もう一歩進んで「概」を取り去ることに成功した者が,素数理論の大快挙を成し遂げたことになるのです.

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