■ワイソフ多胞体研究会(その12)

 ワイソフ算術で扱われる多胞体にはE8なども含まれる.E8リー群から得られる頂点数240,辺数6720の図形は,ひも理論を研究するときなどに使われる.

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 E8格子では,原点においた半径1/2の球に,同じ半径の球を原点の隣点におけば240個の球が接するようにできる.8次元空間における球の接触数は240であり,その配列は本質的にこの形しかない.

 この充填形で,正軸体の1つおきの胞に正単体が続き,他の半分の胞は正軸体同士が接する.格子点として1つの格子点を中心にその隣(距離1)の240個の頂点を結んでできる8次元の「亜正多面体」は正単体が17280個,正軸体が2160個から構成される.

 8次元正単体の体積3/2^48!

 8次元正軸体の体積2^4/8!

 正単体の部分は17280×3/2^48!

 正軸体はその半分の錘体になり,その部分は2160×2^7/2^48!

このことから正軸体の占める部分が大半で,正単体が隙間を埋めている印象である.

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【1】E8格子のボロノイ領域

 単独で8次元空間の充填形になるのは格子のボロノイ領域で,それは17280個の正単体の1/9(ひとつの頂点が最も近い部分)と2160個の正軸体の1/16(ひとつの頂点が最も近い部分)から成り立つ.

 その体積は

  正単体の体積3/2^48!×1/9×17280=1/112

  正軸体の体積2^4/8!×1/16×2160=6/112

の合計(1+6)/112=1/16で,案外簡単な数になる.

 この図形は8次元の平行面体(平行移動で面を貼り合わせて空間充填形になる)のひとつである.

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 このように述べてもイメージが十分涌かないかもしれません.8次元という高い次元の難しさでしょうが,私自身も誤解しておりました.16は8次元正軸体の胞数ではなく,頂点の個数です.9も正単体の胞数ではなく,頂点の個数です.

 ボロノイ図形とは8次元の空間充填形をなす頂点の作る格子点(具体的には八元整数の全体の作る作る格子)において,1個の特定の格子点Oに注目して,その点が最近の格子点であるような空間内の点集合です.

 当然それはOに会する計17280個の正単体と2160個の正軸体の内部で,その頂点Oが最近の頂点であるような点の集合の合併になります.その各々は正単体の頂点まわりの9等分,正軸体の頂点まわりの16等分した部分になります.決して

  17280/9=1920個の正単体

  2160/16=135個の正単体

という意味ではありません.

 たとえとして,3次元空間での正四面体と正八面体からなる空間充填形でみますと,そのボロノイ図形は1頂点のまわりに会する8個の正四面体の頂点付近の1/4と6個の正八面体の頂点付近の1/6の合併になります.

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