■おかあさんのための数学教室(その108)

【2】ヒルベルトの推測に反して

 数学の巨人と称されるヒルベルトは,ポアンカレを議長とする1900年の国際数学者会議で「数学の諸問題」という講演を行っています.ヒルベルトのあげた23の問題は数学のほとんど全分野にわたっていて,彼自身の研究と密接に関連しています.そのなかで,数学の発展をもたらした問題の例として,最速降下線の問題,フェルマーの問題,三体問題,正多面体の問題,代数関数論におけるヤコビの逆問題などをあげていますが,フェルマーの問題がまったく純粋な思考の産物であるのに対して,三体問題は天文学上の必要性から生じたもので好対照をなしています.

 第7問題が2^(√2)やe^πの超越性を問うものです.その後,1919年に,ヒルベルトは数学の難問について講義し,2^(√2)やe^πの超越性の証明はリーマン予想やフェルマー予想を解くよりはるかに難しいと考えたのですが,e^πは1929年に,2^(√2)は1934年に超越数であることが証明されました.

 ζ(s)の零点がs=−2,−4,・・・,−2nとs=1/2+tiの線上にあるというのが有名なリーマン予想ですが,ヒルベルトは,「リーマン予想は私が生きているうちに解決され,フェルマー予想は長らく未解決のままであろう」と述べたといわれています.

 360年ものあいだ未解決の数学的難問であったフェルマー予想は,1994年,ワイルスによって証明されました.しかし,ヒルベルトの推測に反し,リーマン予想は依然としてデッドロック状態にあります.

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