■おかあさんのための数学教室(その105)

【5】素数定理とエラトステネスのふるい

 オイラーの関数φ(d)は1からd−1までの整数のうち,dと互いに素になるものの個数として定義されます.たとえば,d=7の場合1,2,3,4,5,6なのでφ(7)=6,d=10の場合1,3,7,9がそうなのでφ(10)=4となります.

 1は素因数をもたないため,φ(1)は意味をなしませんが,特別にφ(1)=1と定義されます.

  φ(1)=φ(2)=1,

  φ(3)=φ(4)=φ(6)=2,

  φ(5)=φ(8)=φ(10)=4,

  φ(7)=φ(9)=6

 1760年頃,オイラーは,数nが素因数p,q,r,・・・をもつときに,それらの重複度にかかわらず,

  φ(n)=n(1−1/p)(1−1/q)(1−1/r)・・・

であることを示しました.

<DIV> この原理は「エラトステネスのふるい」によっているのですが,たとえば,10=2・5,44=2^2・11,100=2^2・5^2より,

  φ(10)=10(1−1/2)(1−1/5)=4

  φ(44)=44(1−1/2)(1−1/11)=20

  φ(100)=100(1−1/2)(1−1/5)=40

 また,任意の素数pに対して,

  φ(p^n)=p^n(1−1/p)

したがって,

  φ(p)=p(1−1/p)=p−1

となります.

 また,

  n=φ(p)+φ(q)+φ(r)+φ(pq)+・・・+φ(pqr)+・・・

が成り立ちます.すなわち,どんな数nもすべての約数のオイラー関数を足し合わせた値と一致するのです.

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 なお,dと互いに素な任意の整数mに対して,

  m^φ(d)=1   (mod d)

が成り立つことを主張しているのが,オイラーの定理です.オイラーの定理はフェルマーの小定理

  a^(p−1)=1   (mod p)

も一般化したものとなっています.さらに,その後,ガウスとカーマイケルによって,オイラーの定理の一般化がなされました.

 pが素数ならば,フェルマーの小定理により

  a^p=a   (mod p)

ですが,その逆は成り立ちません.nと互いに素であるすべてのaに対して,

  a^n=a   (mod n)

が成り立つ合成数は,カーマイケル数(完全擬素数)と呼ばれます.

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