■おかあさんのための数学教室(その103)

【3】ゼータ関数と素数

 調和級数Σ(1/n)が無限大に発散すること,

  Hn=1/1+1/2+1/3+1/4+・・・+1/n〜logn→∞

は容易に示すことができましたが,奇数項だけを集めて作った級数

  1/1 +1/3 +1/5 +1/7 +・・・

 >1/2+1/4+1/6+1/8+・・・

 =1/2(1/1+1/2+1/3+1/4+・・・)→∞

同様に,偶数項だけ集めて作った級数も収束せず無限大に発散します.

 それでは,素数の逆数の和

  Σ(1/p)=1/2+1/3+1/5+1/7+1/11+・・・

は有限でしょうか?

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(証)ゼータ関数ζ(s)は次のように書き換えることができます.

 ζ(s)=1/1^s+1/2^s+1/3^s+1/4^s+・・・

     =(1+1/2^s+1/4^s+1/8^s+・・・)(1+1/3^s+1/9^s+・・・)(1+1/5^s+・・・)・・・

     =1/(1−2^(-s))・1/(1−3^(-s))・1/(1−5^(-s))・1/(1−7^(-s))・・・

>     =Π(1−p^(-s))^(-1)   (但し,pはすべての素数を動く.)

  1+x+x^2+x^3+・・・=1/(1−x)

にx=1/p^s を代入したものを,Π(1−p^(-s))^(-1)に代入して積を展開すると,自然数の素因数分解の一意性から,ζ(s)=Σ1/n^s となることがおわかりいただけるでしょうか.

 この式の右辺は,すべての素数にわたる無限積であり,このような関係から,自然数全体についての和

  ζ(s)=Σ1/n^s

の話が素数全体についての積

  Π(1−p^(-s))^(-1)

の話になります.Π(1−p^(-s))^(-1)はオイラー積と呼ばれ,ゼータ関数と素数の間をつなぐ式になっています.

 調和級数1/1+1/2+1/3+・・・は,オイラー積表示するとΠ(1−1/p)^(-1)と書けますから,

  Π(1−1/p)^(-1)〜∞.

また,logΠ(1−1/p)=Σlog(1−1/p).1/pが非常に小さいとき,マクローリン展開より,Σlog(1−1/p)〜−Σ(1/p)ですから,Σ(1/p)=∞になります.したがって,すべての素数の逆数の和は発散することが示されます.

 1737年,オイラーはこのようにして素数の逆数の和が無限大になることを見つけました.逆に,このことから,素数が無限個あることは簡単にわかります.また,調和級数Σ(1/n)は発散し,また,オイラー級数Σ(1/n^2 )=π^2 /6で収束しますから,素数は平方数ほどまばらには分布していないこともわかります.

 さらに,このことを詳しく調べると,

  Σ(1/p)〜log(logx) (pはp≦xの素数を動く,証明略)

すなわち,

  1/2+1/3+1/5+1/7+1/11+・・・+1/n〜loglogn→∞

などがわかってきます.log(logx)は1/(xlogx)の原始関数です.

 Σ(1/p)はxに近い整数について,その素因数の個数の近似値を与えるもので,なお,これらの式から

  Σlog(1−1/p)〜−log(logx)

がでますが,両辺の指数をとると前にあげた

  Π(1−1/p)〜1/logx

が得られます.

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